吹き抜ける風になぶられる髪を押さえることもせず、目を細める。この道をまっすぐ行けば帰れるという誘惑に何度も惑わされた。
帰りたくないわけじゃないけど、そこに自分の居場所はもうないだろう。そんなことはわかっているんだ。何であれ変わらない世界なんてないのだから。
「どうしました?」
傍らに立つ男が何も知らずに問い掛けてくる。だが、応えてやる義理も理由もない。
「リンカ?」
見ていたのとは反対の道、つまりは仲間のいる方へ足を進めると、彼は慌てる様子もなく着いてくる。
「行っても構わなかったんですよ」
足を止め、振り返る。彼はとても穏やかな顔で笑んでいた。こいつのこういう、人を見透かすトコが嫌なんだ。
「馬鹿言ってんなら二度と助けないからな」
「フッ、そんな照れなくても」
「照れてねぇっ!」
怒りながら仲間と合流する寸前、囁かれた。
「心配しなくても過去は変わりませんよ。貴女の思い出がなくなるわけではありませんから」
勿論僕の気持ちも、と付け足される。
「お前なんか嫌いだ」
「貴女の分まで僕が愛してあげますから構いません」
「…勝手にしろっ」
言わずとしれたリンカと王子です。読み切り短編で書くものじゃないですね…。
でも、書きたくなっちゃったんだもん。仕方ないじゃん←逆ギレかよw
(2008/10/25)