ハリポタ(親世代)>> Information is Money>> Information is Money 6#

書名:ハリポタ(親世代)
章名:Information is Money

話名:Information is Money 6#


作:ひまうさ
公開日(更新日):2003.10.28
状態:公開
ページ数:1 頁
文字数:4076 文字
四百字詰原稿用紙換算枚数:約 3 枚
デフォルト名:////レン
1)
6) 変身薬の予期せぬ効果をレポート!
前話「Information is Money 3#-5#」へ p.1 へ あとがきへ

<< ハリポタ(親世代)<< Information is Money<< Information is Money 6#

p.1

 リリーになって三日目。私はまだ元の姿に戻れないでいる。授業に出るわけにも行かないので、ホグワーツ内の自分の隠れ家のひとつとしている教室で今、これを書いている。これ、この紙を作ったのは私だけれど、教えてくれた人物は現在、

 図書室に行けば会えるだろうか?

 会えたとしても素直に教えてくれるとは限らない。交換とする情報も足りない。

 となると、ここはやはり魔法薬学に詳しい彼に頼むのが得策だわ。さて、今回はどんなネタで行こうかしら。

 丁度、教室のドアが開いた。こんな風に静かに歩く足音は彼しかいない。

「セブルス」
 いつものように呼びかけて、気が付く。まだ話していないから、リリーのマネをしても気がつかないだろう。

「セブルス・スネイプ?」
 彼は何も言わずに近づいてくる。一片の迷いもない足取りに、ただ微笑んで見せる。

 私の目の前で立ち止まり、瞳に困惑の色を乗せて、深くため息を付く。たぶんいつもきっちりと止めている緑と銀のネクタイのせいではないのだろうか。この人は、見かけ以上にいろいろ苦労しているみたいだし。大半は私のせいもあるかもしんないけど。

「貴方、魔法薬学は得意だったわよね?」
 眉間に皺が増えたわ。この年でその表情が似合うって、問題ありだと思うわよ。まるでこれから先も人生が大変そうに思えるもの。

「事情は大体聞いた。材料は揃えてあるのだろうな、レン」
 先手を打たれて、肩の力を抜く。

「どれが必要かなんて、私にわかるわけないじゃない」
「威張ることじゃないぞ」
 胸を張って言いきると、何故かセブルスも安堵を見せる。口角も僅かに上がり、笑っているようにも見える。

「中身は本当にそのままなのだな」
「中身までリリーになれるわけないじゃない」
「安心した」
 ローブから袋を取り出し、テーブルに並べる。鍋は用意しておいたもので十分なようだ。

「心配してくれたの?」
「先日のバカ者どもがな、おまえを袋にしてやると言っていたのでな」
「そんなこと本当に出来るわけないのに、ずいぶん暇なのねぇ。スリザリンって」
 しみじみ呟くと、セブルスの動きが一度だけ止まった。

「本気でそう、思っているのか」
「ええ。悪いかしら?」
 夕陽色の髪に指を通す。さらりと通り抜けるそれは、ぴかぴかと光って、とても綺麗だ。ずっと羨ましいとは思っていたけれど、いざ手に入ってしまうと、もとの自分の真っ黒な髪のほうが恋しくなるなんて、へんてこだ。セブルスともシリウスとも同じ色だけれど、暗い色だとは思うけれど、やはり自分の姿のほうが性に合う。合う合わないの問題でもないか。

「いいや、レンらしいな」
「なにそれ」
「はっ、深く気にするな」
「気になるに決まってるでしょう」
 こちらに一度視線をやり、材料を順序良く、一部の無駄もなく調理して行く様を眺める。

 ひまだわ。

 こうしてみると、セブルスも悪くない。真面目すぎるぐらい真面目で、とても頼りになる。それを覆い隠しているのはやはり、緑と銀のネクタイのせいなのだろうか。だが、他の寮のネクタイが似合うかといえば、とてもそうは思えない。

「なんだ?」
 不機嫌に振りかえると、後ろで緑色のリボンが揺れた。

 緑色のリボンが。

「ぷっ」
 犯人は誰なのかわかっているけど。こんなことをするやつらは心当たりがあるけれど。ここはひとつ恩を売っておくべきか、それとも黙っておくほうがいいか。

「…クッ…フフ…」
 ダメだ。目が離せない。少し動くたびに、揺れる緑のリボンが。

「可愛いわよ、セ・ブ・ちゃん」
「!?」
 私の視線を追い、頭に手をやる。状況に気が付き、顔を赤くしたり青くしたり、そのうち怒りモードになって。なんて飽きないのかしら。この人。

「あいつらか…!」
 投げつけられた緑のリボンを手に絡めるが、リリー姿にはさぞかし似合わないことだろう。もとの私の姿でもセブルスよりも似合うという自信はない。

 動揺を抑えて鍋を混ぜている当り、セブルスも慣れている。

「セブルスはさー、私のこと、好き?」
 ガシャンと鍋を混ぜていたおたまが落ちた。ずいぶんと大げさなリアクションをするものだ。

「ふふ、昨日さ、大変なことが判明しちゃったのよ。まさか自分の情報が間違ってるとは思わなくって、驚いちゃった」
「そ、そうか」
「私の情報コレクションは半分趣味なわけよ。でも、もう半分は」
「自衛、だったな」
「そうそう。情報は私の最大の武器だもの。だから、間違っていると困るわけよ」
 一歩間違うと、昨日みたいな目に合うのは実証済みだ。

「この際だから、セブルスの情報をひとつ確認させてもらってもいいかしら?」
「私のか?」
「シリウスとリーマスの情報が誤解だったからって、まさかセブルスまでリリーじゃなく、私を好きなんてことないわよね?」
 首を傾げるとやっぱりさらりと流れ落ちる髪に、段々と慣れてきた。セブルスはこちらを見ずに、小さめのグラスに完成した液体を入れている。色は、私の好きな夕焼の色。この色を出すのはなかなか難しい。

 それを差し出される。

「完成?」
「さっさと飲め」
「流石セブルス。天才っ」
「良いから飲め」
「はぁい」
 グラス越しに見たセブルスは、いつのまにか真っ直ぐにこちらを見ている。真剣な眼差しは、セブルスをより格好良く見せると思う。今度教えてあげよう。

 目を閉じて、夕焼色のその液体に口をつける。甘い甘い喉越しは、ほんの少しだけ身体を温める。やはり酒でも入っているのだろうか。あの時のような焼けつくような痛みはなく、ただくらくらと意識を溶かされているような気分だ。ほどよい酩酊感というのはこういうものなのだろうか。

「ふらついているぞ」
「あぁ、うん…」
 腕を引かれるままに、彼に寄りかかる。ローブに染み付いた香りは数種の薬品が混ざり合った匂いなのに、どこか落ち着く気分になるから不思議だ。

「セブ~」
「先ほどの話だがな」
「ん~?」
「私はこの姿のレンのほうが安心するよ」
「?」
「そのような誤解をされているとは思わなかったがな」
 肩を覆う腕に、力が篭る。彼の手であげられた私の髪は元の通りの漆黒で、その手に残る一房にセブルスが口付ける。

「私が好きなのは、レン」
 それを合図とするように、意識が睡魔に覆われてゆく。



「おまえだ」



 まただよ。この人も、私の本性を知っているはずなのに、どうして? 好かれるような行動をとってきたつもりは全然ないのに。

 私にはまだ誰かを特別に好きなんて気持ちはわからない。わかるのは、リリーが大切で、とても大切で、無くしたくない親友だってことだけだ。その他のことまで考える余裕はない。

「レン? 眠ってしまったか?」
 いいえ、意識はなんだかはっきりしてきたけど、どうにも身体が上手く動かせないわけよ。かといって、自分の身体を上から見下ろすなんて事態にはなってないし、ただ、動かせない。自分の身体を動かせない。

 て、これって失敗なんじゃ!?

 バタバタと複数人の走る音が聞える。足音は近づいてきているのに、セブルスは気が付いていない。

「レン!? おい、まさかっ」
「スネイプ、貴様、レンとふたりで何してやがる!!」
 教室のドアを勢い良く開けて、真っ先に飛び込んでくるのはやはりシリウスだ。

 動け、今、動かないともっと大変なことになるわよ、私!!

「レンは無事!?」
 リリーの声だ。錫の鐘の音が、響き渡るような声に耳が震える。

「スネイプ君、あなた、レンに何をしたの?」
 その甘やかさとは対照的でありながら、氷塊石の輝きを放つ声が、私は一番好きだ。

 動いて、私の身体!

「ん、なんだ?」
「…リー…ぃ」
 もう、少し。あと、少しで、動く。

「なに、どうしたの、レン!?」
 すぐ近くで香るリリーの凛とした匂いが、ふわりと私を囲む。そうして、また一度力が抜けて、すべてが元通り。

「…リリー…?」
「レン!」
 目の前に涙で顔をぐしゃぐしゃにしても美人な私の親友の姿を見て、本当に安心した。

「リリーっ、もう、ダメかと思ったわよーっっっ」
 抱き付いて泣きじゃくる私の背中を優しく撫でてくれる。こんなに安心したのは初めてよ。

「もう大丈夫よ、レン」
「リリーっ」
 ふわふわのリリーの腕の中は、何よりも安心できる場所だ。ホグワーツ中で、一番安全な場所だ。

 止めど無く零れる涙は、止める術を知らず、どばどば溢れてくる。

「もう大丈夫だから。ね?」
 空気が凍りついた音があったら、きっと今の音はソレだ。急いで顔を上げるとリリーが怖い笑顔で私の後ろを見ている。

「リリー? どうしたの?」
「なんでもないわ。もう絶対レンを撒き込まないって約束させるから」
 親友の様子が、おかしい。こういう時のリリーは、何をするのか私も知らないのよね。

「約束するわよね?」
「こ、今回の発案はジェームズだぞ」
「僕らは手伝っただけで」
 そういえば、ジェームズの姿が見当たらない。

「レン、あなたも後でじっくりお話しましょうね?」
 向けられた笑顔から逃げたくとも、しっかりと抱き抱えられている状態では逃げ場がない。

「は、はい」
 今さっきより、親友の笑顔がナニヨリ怖いと思った瞬間でした。

 その後、私はリリーにほとんどの情報を聞き出され、本格的になるシリウスとリーマスとの抗争に挟まれる日々を過ごしています

 時折、セブルスも助けてくれますが、ピーターは当てになりません

 懐かしき、リリーの告白現場の盗み見をしていた頃には、いつか戻れるのでしょうか? とても自信がありません


「レンーっ、大広間でチェスでもしない?」
「すぐ行くから、先行ってて」
 羽根ペンを置き、ノートを閉じる。表紙は灰茶色で薄汚れて見えるように、杖で触れる。すぅっとノートが机に溶ける様は、まだ誰にも話していない。私だけの秘密のノート。

「あ、シリウスたちにも声かけてくか」
 ローブを引っ掛け、慌しく談話室に降りる。たぶん、同じくらいに降りてくるはず。

「レン、遅いっ」
「ごめん、リリー」
 美しく聡明な私の親友は、一番大好きで、一番大切で、一番怖い存在でーー。

あとがき

- 6) 変身薬の予期せぬ効果をレポート!


強制終了。スンマソン。長引いた末になんだかよくわからなくなりました。
書いてて楽しいには楽しいけれど、ソレだけではいけないらしい。
(2003/10/28)