宵の刻、急に目が覚めてしまった。夢をみたせいなのか、それとも部屋の前の気配に気がついたせいなのか。よくわからないのだけど。
「そんなところで何をしているんですか、土方さん?」
普段は鬼の副長と呼ばれるほどに厳しい人なのに、どこか小さな子供みたいに頼りなげな背中で。思わず声をかけていた。こんな夜中に起きている自分の方が怒られるかもしれないのだけど、放っておけなかった。
「ああ、悪い。起こしちまったか」
手近な羽織を肩にかけ、土方の隣に静かに座する。土方の手元には何も書かれていない短冊だけがあり、こちらを向かずにただじっと眺めている。
静かな時間が流れた。
ーーしれば迷ひしなければ迷はぬ恋の道
「え?」
聞き返しても土方さんは笑うばかりで応えてはくれず。ただそっと私を引き寄せた。
「え、あれ、土方さん?」
「黙ってろ。他のヤツらがおきちまう」
「でも、だ、だって…!」
狼狽える私は直ぐ近くで聞こえる鼓動に、次第に目蓋が重くなり。
「怒られますよ」
「誰にだ」
普段怒る人が珍しいことだと思いながら、目を閉じた。
俳句は難しいですね。
最初は永倉さんにしようかと思ったんですけど、土方さんの方が面白そうだと思ったので。
でも、面白いと言うより…別人だ!