「伊藤さん」
「何でしょう?榛野さん」
常に纏う、穏やかな空気でもってふんわりと微笑んだ伊藤は、榛野の方へ振り返る。
「しばらく、ご一緒させていただいても良いでしょうか?」
いつになく真剣な表情で榛野が言うものだから、珍しい。と伊藤は隣の座布団をすすめ。
「ええ、かまいません。ゆっくりして下さい」
「それでは、失礼して」
静かに伊藤の隣へ座り、開け放たれた襖の向こうへ視線を向けた。
「良い、お天気ですね」
「そうですね」
「お茶でも淹れましょうか?」
「お気遣いなく」
「そうですか」
緊張しているのか、ソワソワと自分を見つめる榛野に、小さく笑って伊藤は彼女を手招く。
「そんなに緊張しないで下さい」
「き、緊張しているわけではないのですが……」
困った様に寄ってしまった眉間の皺を、伊藤はちょいとつついて榛野の顔を上げさせる。
「実は、平助くんにですね。伊藤さんの素晴らしさをとくとくと語られたんです」
「はぁ」
「それで、ですね。 葉桜さんも伊藤先生と話してごらんよと言われたんです」
自分としては伊藤さんの素晴らしさを理解していたつもりだったのだけれど、藤堂の 藤先生熱があまりにも高く。
一緒に居ても伊藤先生、伊藤先生。と伊藤の話題が離れない。
「なので、伊藤さんの様に平助くんの頭に一日中いられる人になりたいな。と」
と、言われてしまった伊藤はといえば、何やらくすぐったい気持ちになってしまい、笑みが零れてしまう。
「榛野さんは、藤堂さんがお好きなんですね」
「えっ、あ、その…」
頬を赤くして、いらない事まで話してしまった。と口元を押さえた榛野に、伊藤は優しい声音で抱き寄せる。
「榛野さん」
「なっ!!」
「静かに、しばらくこのままで……」
伊藤の言葉が終わらない内に、けたたましい足音と声が部屋中に響き渡る。
「葉桜さん!!」
「おや、藤堂さん。どうしました?」
にっこりと藤堂に返した伊藤は、榛野の肩にかけた腕に力を込めた。
「どうしました?じゃないです!葉桜さんを離して下さい」
「ちょっ」
伊藤の腕からぐいっと榛野を引っ張り寄せ、藤堂ははっきりと言った。
「葉桜さんは俺のなんです!」
だから、伊藤先生でも許しません!
榛野を後ろに隠し、小さな身体で精一杯言った藤堂は、そのまま部屋から去ってしまう。
残された伊藤は、込み上げてくる笑いを抑えずにクスクスと笑い。
「やっぱり、榛野さんは面白い方ですね」
藤堂の話に何時も出てくる葉桜さん。に興味を抱いていた伊藤は、2人が少し羨ましい。と読みかけの書物に目を落とした。
「葉桜さん」
「な、何?」
ビクリと身体を震わせた榛野の手を握り締め、顔を近づけて言った。
「伊藤先生は素晴らしい人だけど…その、会う時は俺と2人で…ね?」
真っ赤になった藤堂が、やたらと可愛い顔で可愛い事を言うものだから、榛野はぎゅうっと抱き締めて頷いた。
END
ってなわけで、下書きでは伊藤先生がワタワタしていたハズが…やってくれたよ(苦笑)
あれだね、平助夢じゃない上に偽物でごめんよ(-_-;)
伊東先生いいなぁと思ってたところにズガンと来ましたよ!
でもって、可愛い平助にめろめろですvV
有り難く飾らせていただきます。一条さん有難うー♪
(06/03/30 09:25)