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書名:幕末恋華
章名:読切

話名:恋華@斎藤 - 蜩


作:ひまうさ
公開日(更新日):2006.4.10
状態:公開
ページ数:1 頁
文字数:272 文字
四百字詰原稿用紙換算枚数:約 1 枚

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p.1

 カナカナカナと、ヒグラシが鳴く声。

「あの、斎藤さん?」
 取られた手に固まったまま声をかける。夕暮れとはいえ、町外れとはいえ、この辺りもそれなりに人通りがある。

 私の声に、彼は微動だにしない。

「甘い、な」
「はい?」
 好いた人に抱き寄せられ、肩に顔を埋められ、動揺しない女がいるわけがない。

「さ、斎藤さん!」
 でもここは往来で、たぶんもうしばらくすれば他の新選組隊士の方々も通るわけで。

「俺の部屋に来るか?」
「はい?」
 なんで!?

「誘っているのだろう?」
 その甘い匂いが、と。

「誘ってません!!」
 真っ赤な顔をして叫ぶ私を、彼は嬉しそうに笑った。

あとがき

「揺らぎの葉」で滅多に書かない人を書いてみよう企画(~)。
今回は斎藤一さん。
言葉が足りなすぎる人。
妄想が大変なことになっていそうな人。
あとは冗談が冗談に聞こえない人。
そんなイメージ(酷。
(06/04/10 12:56)