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書名:幕末恋華
章名:読切

話名:恋華@近藤 - キラキラ


作:ひまうさ
公開日(更新日):2006.3.27
状態:公開
ページ数:1 頁
文字数:775 文字
四百字詰原稿用紙換算枚数:約 1 枚

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p.1

 甘い欠片を空に放り投げ、キラキラと陽光を反射させながら落ちてくる其れに食らいつく。

「美味しい~っ」
 袋いっぱいの金平糖の提供者は、近藤さんや山崎さんや島田さんだ。甘いもの好きの私に彼らはいろいろなお菓子をくれる。お返しできることと言えば、お茶を淹れることぐらい。それでもいいと言ってくれるので、いつも通りお茶を淹れた後、誰もいない縁側に座って、行儀悪く投げ食いしているのである。永倉さんあたりがいたら、きっと「ガキ」等と馬鹿にするのだろうけれど、昨日がお給金の日だったので島原から帰ってくるワケもない。

 もう一度放り投げ、落ちてきたそれに食らいつく。

「美味しい~っ」
 幸せをかみしめていると、クスクスと笑う声が聞こえた。

「器用だねぇ」
 楽しそうな声に満面の笑顔で応える。

「昔から得意なんですよ」
 自慢げな様子にクスクスと忍び笑いを漏らしつつ、隣にしゃがみ込む。そして、大きな手を差し出した。

「俺がやってみてもいい?」
 なんだろう?まあ、近藤さんなら変なコトはしないだろうし。

「いいですよ」
 快く渡してから、私は自分の甘さを知ることとなる。



*



~数分後~

 私の周りにはキラキラとした欠片が散らばっている。

「あ~ぁ」
 すまなそうな近藤さんの姿に、怒る気も失せてしまった。キラキラの中に寝転がる。右を向いても、左を向いてもキラキラ。

「ふふふ」
「あの~…?」
 幸せだなぁ。

 近藤さんがいて、甘くてキラキラしたお菓子があって、平和な今が何よりも。

「幸せ~っ」
「へ?」
 呆けた表情の近藤さんに説明してみる。

「だからですね。近藤さんがいて、金平糖があって、キラキラしてて、平和だなぁって」
 だから、幸せ。

 そういうことかぁ、と呟いた近藤さんは私のそばに膝をついて、優しい声で囁いた。

「だったら、俺も幸せだなぁ」
 目だけで何故と問う。

「君を独り占めできるからさ」

あとがき

近藤さんがリクエストされたので、甘い近藤さん。
近藤さん=御菓子をくれるという認識を改めねばならない一作となりましたー。
こんぺーとー以外にも御菓子はあるのに、言葉の響きが好きなので今回もこんぺーとー。
投げ食いに饅頭は向かなそうです。
(2006/03/27)