ひとふたみよ
いつむよなな
やここのたり
ふるべゆらゆら
ふるべゆらゆらと
ふるべ
「なんだそれ?」
壬生寺の境内で俺を膝枕する彼女が詠う文句は耳に心地良く。体の中までさやさやと浸透していくよう。
「元気の出るおまじない、かな」
夕陽を受け、柔らかく微笑む彼女の柔らかな膝に体を預け、両の目を閉じる。
「元気な左之助さんが大好きなの。だから、早く元気出してね」
言わなくても気が付いてくれたことが何より嬉しい。なぁ俺はそんなお前が。
再び彼女が詠いだす。子守歌のように、優しく柔らかく包み込んでゆく。
ひとふたみよ
いつむよなな
やここのたり
ももちよろず