一年で一日特別な日。
「左之さん」
壬生寺の境内で隣に座っている人をみると、大口を開けて団子を食べている。その姿が楽しくて笑いを零す。
「この間お店に来た変な人の話なんですけどね」
「!?」
あ、むせてる。
「その人が言うには西洋では生まれた日に歳祝いをするそうですよ」
「左之さんは何時のお生まれですか?」
聞いたとたん、両肩を掴まれた。
「へ、変な人って男か!?」
「はい?」
「何もされてねーんだなっ?」
「…はい」
「なんだよ、驚かせんなよ」
危なく団子が詰まるところだったと笑っているけど、まだ私の質問に答えてくれていない。
じーっと見つめていると抱き寄せられた。
「んで、お前はいつの生まれなんだ?」
照れているときはいつも私から顔を背けてそうする。見るなっていうけど、そんな左之さんが可愛くて、クスクス笑っていたら困った顔が帰ってきた。
「正確な日は分からないんですけど、母様がおっしゃるには今頃らしいです」
それからしばらく黙っていたかと思うと、急に抱き上げられ腕の中に収められた。
「左之さんっ!?」
「じゃあ、今日でいいな」
にやりと目の前で笑っているけど、その奥の瞳は真剣そのもので。
「おめでとう、だな」
こつんとあたった額が少しだけ熱くなった。