幕末恋風記>> ルート改変:才谷梅太郎>> 慶応三年弥生 10章 - 10.5.2#出会茶屋

書名:幕末恋風記
章名:ルート改変:才谷梅太郎

話名:慶応三年弥生 10章 - 10.5.2#出会茶屋


作:ひまうさ
公開日(更新日):2006.7.19 (2013.4.3)
状態:公開
ページ数:1 頁
文字数:7240 文字
四百字詰原稿用紙換算枚数:約 5 枚
デフォルト名:榛野/葉桜
1)
揺らぎの葉(73)
才谷イベント「出会茶屋」
レイさんのリクエスト

前話「慶応二年長月 09章 - 09.1.1#当ててみぃや」へ p.1 へ あとがきへ 次話「慶応三年卯月 11章 - 11.2.1#悪夢」へ

<< 幕末恋風記<< ルート改変:才谷梅太郎<< 慶応三年弥生 10章 - 10.5.2#出会茶屋

p.1

 肌で感じる春の気配に、私はぐっと腕を上げて歩きながら伸びをする。朝から近藤と話していたらイライラしてきたので、ちょっと島原にでも行って癒されてこようと思ったというわけだ。で、今私はまっすぐに道を進んでいる。

 京の町人に対してにこやかに挨拶を返しながら、私は機嫌よく良い気分転換になるなぁとほくそ笑む。今日の私は非番なのだが、今は伊東らが御陵衛士として出て行くということが屯所内に波紋を呼んで、普段以上に居づらいのだ。原因を作った張本人としては、何を訊かれても困るし、答えられない。だから、端的に言うと、逃げてきわけだ。

 途中、見廻組数人が私を追い抜かし、高く揺った髪が揺れるのを軽く手を添えて抑えた。彼らは何か色々と頑張ってるみたいだけど、新選組では誰かを捜すって命令は出ていなかったように思う。幕府側の動きも今はないはずだが。

 ふと前方に見慣れた背中を見つけ、私は片手を上げた。

「あ、梅さーん!」
 私の人違いだったのか、その人は振り返らずにそのまま去ってしまったわけだが。彼の姿を見間違えるというのは、中々に難しいぐらいに特徴的だ。

 まぁ、つまりは。

「ふっふっふっ、この私から逃げようなんて十年早いっ!」
 小さな頃からこれまで、鬼ごっこで鬼になった私から逃げ切れた者はいないのだ。何が何でも捕まえて、無視した理由って奴を吐かせてやる。と、決意新たに人影を追いかけて、私は走りだした。

 夢中で影を追いかけ、走り続けて、そして、ふと、気がついて足を止める。どの辺りまで来ただろうか。この辺りは、えっと。

「……梅さん、どこですか」
 どうしよう、迷ったよ。今更だけど、迷ったよ。何年京にいるんだとか言われても困るぐらい迷ったよ。だって、京の町は碁盤の目のようにどの道も同じで区別がつかないんだ。元々方向音痴の自覚はあるんだから、覚えられるわけもない。

 さて、どっちからきたんだっけ。とにかく、この辺りにいるはずの才谷を見つければ、帰れるだろうか。

「梅さんっ! 梅…ぐっ!?」
 だから、私は大声を上げて彼を呼び求めたわけだが。途中でいきなり首の根本に衝撃があって、この私が相手をひと目見ることもなく昏倒させられてしまった。この私が、為す術もなく敵の手に落ちるなんて、相当の手練ーーというのは言いすぎかもしれないが、かなりの腕前なのは確かだ。

 しかし、これでも武術を修めた者として、確かな勝算があったからこそ、私は大人しくされるがまま意識を失ったのだ。どこにいるかは分からなかったけれど、私が声を上げて名を呼んだ時、彼のかすかな気配が近づいていたからだ。だから、もしも敵の手に落ちたとしても、彼ならば何らかの手を打ってくれるだろう。

 だが、もしも起きてから、自分が酷い目に遭ってたら、彼をぶん殴ってやる、と私は密かに心に決めていた。それが最後の想いと記憶だったから、次に目を開けたらその顔が目の前にあって、私はひどく吃驚した。

「なんちゃーがやないなが? どこか痛いところはないがでか?」
「う、梅さん?」
「軽い当て身のつもりが力が入りすぎてしまっちゅう」
 普段以上の訛りと早口で、私には才谷が何言ってるか聞き取れなかった。それはともかく、だ。問題はなんで、私は彼の腕の中で抱きかかえられてるわけなのだろうか。

「ちょ、ち、近い!」
 才谷の腕から抜けようと、私が必死に顔を背けて、彼の顔を押しやると、苦笑が返ってきた。

「良かったやか。ぎっちりの葉桜さんやき」
 そして、才谷は私を強くぎゅっと胸が苦しくなるほど抱きしめて。うわぁ、何これ。いつもの才谷なんだけど、なんだかちょっと様子が違う気がする。

「ええっと、私を気絶させたのって、梅さん? 強いとは思ってたけど、まさか反応できないとは思わなかったよ」
 驚いたと私がいうと、才谷から驚いたのはこっちだと返された。

「いきなり叫び声を出されてもうて、死ぬかと思ったぜよ」
「呼べば出てくると思って」
「はっはっはっ、わしはおんしにとって何なが?」
 再び強く抱きしめられ、真剣な声で問われて戸惑った。

「梅さん?」
 彼はいつもの様に笑っているけど、何か違う。やっぱりいつもと様子、雰囲気が違う気がした。香も体つきも、腕もみんな才谷だし、別人というわけでもない。何よりこんなに特徴的な人を、私が間違えるはずがない。

「梅さん…?」
 もう一度小さく囁くように言って、私は緩められた腕から顔を上げ、才谷と目線を合わせた。

「何故、私をみて逃げたんだ?」
 ふいと才谷の視線が、私から逸らされる。

「あの時ちっくと間が悪うてな」
「何かあったのか?」
「わしによお似て色男の有名人に間違われてしもうてな。見廻組に追われちょった」
 才谷はいつものように冗談交じりに返してはくれるけど、この胸に残る違和感はなんだろう。らしくない彼の創りだす、この沈んだ空気のせいだろうか。

「自分で言うか」
「わしに似ちょったら色男に決まっちゅうが」
「でなくて、坂本さん、が自分でそれ言っちゃダメだろ」
 私が小さく呟いた彼の本当の名前に対し、才谷から答えは返ってこなかった。ただ驚きで緩められた彼の腕から抜け出し、私は彼の前で足を揃えて座り、居住まいを正す。

「梅さんは見廻組に追われてたのか。ーーもう、そんな時期なのか」
 あの紙に書いてあった時期を考えると、おかしくはない頃合いなのかもしれない。しかし、それは近づいてくる終わりを容赦なく私に突きつけようとしてくる。時の先を知らされているといっても、それは所詮紙の上だけのことだと、私をいつも突き落とす。

「葉桜さんは時々へごなことをゆうたね。で、おまんはわしに何の用事があったんじゃ?」
 才谷の手がそっと私の頭に乗せられ、ゆっくりと撫でられる。その顔を見つめながら、私はどうしてこの人を探していたのかを思い出した。迷子になったから屯所まで送ってもらおうと思っていたのだ。だけど、気が変わった。やがて来る時のこともあるけれど、今のままの才谷を一人で置いてはおけない。私はきちんとこの人と向きあわなければいけない時期に来ているのだろう。だったら、逃げる訳にはいかない。

「そう言えばここ、いったいどこだ?」
 話をするには場所を移した方がいいかもしれない、と私が室内を見回すと、何故か一組の布団が目に映った。他にこの部屋においてあるものは鏡台ぐらいだ。なんだか、いやな予感がして、自然と眉根が寄る。

「出会茶屋やか」
「出会茶屋って、であい…や、やっぱりそう、なの?」
 島原の角屋に行ったり輪違屋に行ったりはあるけど、実のところ私は出会茶屋に入るのは初めてだ。だって、女の子のお酌と唄と踊りと見るんなら、島原や祇園に行った方が断然良い。ここはどちらかというと、男と女が逢い引きして、あれこれとする場所であって。

 うわ、想像するだけで頭に血が上りそうだ。

「な、何でこんなトコに…」
 思わず顔に手を当て、俯いてしまう。

「見廻組に見つかったらヤバイきに、ここに入ったぜよ」
 おいおい、気絶した女連れているんだから、誰か注意ぐらいしようよ。普通に座敷にあげるなよ。て、今の私をみて女と気付くほうが稀か。

 頭を抱えている私の髪紐が、軽く引かれる。それぐらいで解けはしないから構わないが、文句をいうために私は才谷の顔を見つめた。

「なあ、おまんのお国はどこなが?」
 そういえば、才谷とは様々な場所で会うけれど、互いの素性といった話をしたことはなかったかもしれない。これだけ何度も会っているのに、それはなんだか変な感じだった。私は紐を弄る才谷の手を取り、両手で挟むように包み込む。

「宇都宮って知ってるか。おまえと出会ったときはもう旅暮らしだったけど、それまでは城下の小さな道場で、私は道場主をしていたんだ」
 私のその思い出は、今でも目を閉じるだけではっきりと脳裏に思い出せる。道場も通ってきていた子供たちも、訪れた人々も、住んでいる家族も。

「道場自体は表向き弟が継いで、叔父が手伝ってくれていたんで。私はもっぱら町の相談役みたいな感じでさ、困ったことがあったら相談に乗ってやって、できる限り解決してやる。そういうことを生業としてきたんだ」
「今と大して変わりやーせんね。じゃーどうして、新選組に?」
 理由はまだ才谷に話せないから、私はただ小さく笑って目を逸らした。彼はまだ時の本流にいるから。そういうものに話せないことは、もう身に沁みてわかっている。

「女の子にね、頼まれたんだ。近藤さんたちを、鈴花ちゃんを助けてくれって」
「…たったそればあで?」
「まあね」
 目の前で驚いている男に笑って、私は懐から紙を取り出してみせる。

「何か見えるか?」
 才谷に首を振られ、私は何度となく感じたため息を苦笑に変えた。

「これはその女の子に書いてもらったものだよ。ここに、これから新選組に何が起こるのか全部書いてある」
「他の人には見えないらしいけど、私にははっきりその字が見えるんだ。今までこれが外れることはほとんど無かった。だけど、少しぐらいなら道を変えられる。私はそのほんの少しの手助けをしてやることしか出来ない」
「ここに書いてあることによると、本当なら今山南さんは生きていない」
 実際のところ、私は山南を本当に助けられるとは思っていなかった。でも、あの芹沢の一件からは命を賭けてでも彼の道を曲げてみたいと、曲げたいと、本気で願って。ただ、ただ必死だった。

「やけど、山南さんは生きちゅうが」
「うん。今でも時々山南さんが生きていることが、私には嘘みたいに思える。彼が死んでしまわないか、いつも心配でたまらないよ」
 冗談に隠した私の不安を感じ取った才谷は、そっと私の頬に大きな手を当ててきた。その手に私は進んですり寄る。今は人の温もりが、何よりも安心できるから。

 才谷の未来は、山南と同じく明るくない。ただ広がる赤黒い闇を、私は誰にも話したことはない。だけど、止めたいと、彼を活かしたいと思う気持ちは、あの時と遜色ない。

 私は自分の頬に添えられた才谷の手を取り、まっすぐに彼を見つめた。

「助けが必要なときには、必ず私を呼んでほしい。絶対に、助けるから。この命に代えても貴方を助けるから……っ」
 才谷が殺されてしまう未来がある。それは今一番近い未来で、一番実現してほしくない未来だ。坂本竜馬が生きていれば、伊東は疑われることがないし、新選組が御陵衛士を成敗することにもならないし、引いては近藤が死ぬ理由にならない。

 私は皆に、この手で守りたいと想う皆に生きてほしい。特に今は新選組の皆や才谷らがいない未来を視るくらいなら、死んでしまいたいとさえ思ってしまう。だけど、私にはこの身に課せられた役目のために、それを選ぶことは許されない。だったら、足掻く他ないじゃないか。

「葉桜さん、ほがーに簡単に命を懸けてはいかんちや」
 才谷の真剣な瞳に、不安げな私が映る。

「それに、わしは守られるよりも葉桜さんを守りたいきす」
 目の前で破顔されて、一瞬才谷のそれに私は魅せられていた。守りたいだなんて、私にいう人は殆どいないから、言われ慣れていないから、理解すると同時に恥ずかしさで顔が熱くなる。

「ん? 急に顔が赤くなっちゅう」
「梅さんがは、恥ずかしいこというからだっ」
「やけど、今までほがなことは」
「いいから離せっ」
「嫌やか」
「離さねーと、殴る」
 私が低い声で告げると、あっさりと才谷は離れた。

「葉桜さんのぱんちは痛いやか」
 ほう、しっかり学習してるじゃないか。私は彼と離れたことで気持ちを切り替え、体勢を立て直した。

「私は話したんだから、梅さんの話も聞かせてよ」
 才谷は大きく頷き、私を軽く手招いた。私が躊躇なく近づくと、くるりと世界が回転させられ、あっという間に才谷を見上げる体勢にされている。そういえば、才谷が本当は強いんだってことを、今日の今日まで私はすっかり失念していた。

 いつか手合わせしてくれないものだろうかと期待を込めて私が見つめていると、才谷は苦笑しつつ、ずっと遠くを見るように話しだした。

「わしは土佐の生まれやか。澄んだ海が見える、まっこといい場所じゃ。おまんは北の方で育っちゅうから知らんかも知れやーせんが、土佐の海は明るうて、澄みわたっちゅうが」
 土佐の方は少しだけなら見たことがある。小さな時分で、父様に付いていっただけというせいも相まって、あの辺りまでどうやって辿り着いたのかも私は憶えていない。だけど土地の人は皆優しくて、温かかったことはなんとなく思い出せた。唯一鮮明なのは、昼頃に起きて海を見ると入江は真っ白で、その向こうは透き通った青の波がさざめいていて、とても綺麗だったことだ。

「いつか、おまんを船にのせて遠くまで連れて行きたいぜよ」
「きらきら輝く海を越えれば、どこもかしこも見知らぬ世界じゃ。のう、いつか一緒に見に行くぜよ」
 おそらく私は、死ぬまでこの国を離れることは出来ない。徳川が倒れたら死んでしまうかもしれないし、倒れなくとも巫女である限りは海の向こうへ行けないだろう。だけど。

「うん、いつか行けたらいいなぁ」
 純粋に、才谷の気持ちが今の私には嬉しかった。役目さえなければ、いや、なんの柵もなければ、きっと人は何にも縛られずに、大海へ出て行くことが出来るだろう。だけど、私はこの役目をこれ以上他の人に任せるつもりはない。生きられるギリギリまで、この身ひとつで全てを浄化しようと決めているから。一緒に行くことは、一生叶わないだろう。

 また泣きそうになる私の前に、才谷は懐から鉄の塊を取り出す。

「ああ、おまんに見せてやりたいものがまだあったんじゃ、ほれ」
 目の前に出されたのは、以前に町娘を私が助けた時に乱入した才谷が、浪人達に突きつけた銃のようだ。銃そのものは見たことがあったけれど、近くでよく見てみれば、かなり変わった銃であることがわかる。

 まじまじと惹きつけられる私を、才谷がくすりと笑う。

「西洋渡来、六連発の最新型やか。機能的で、しかも美しいじゃろ」
 才谷の手から、私はそっとそれを取り上げた。鉄の塊というだけあって、ずっしりとした重みがある。

「これが例のやつか。銃はよく分からないけど、こういう風に使うんだっけ?」
 私が両手で持ち手を握り、目の前の襖に向けて適当に構えると、才谷は笑いながら取り上げて、きちんと構えた姿を見せてくれた。

「おぉ、かっこいいー」
「はっはっはっ、そうにかぁーらん」
 私が手を叩いて褒めると、照れた様子もなく笑って返してくる。彼の陰りは消えていないけれど、少しは気分が変わってもらえているようだと、私は小さく安堵した。

 それにしても、と才谷の手にする銃を見つめる。これから先きっとこういう最新式の銃が沢山出てくることだろう。わかっているなら、私はそれに対抗する方法も考えなければならないし、やることは唸るほどに多く難しい課題ばかりだ。

 銃弾を避けることは難しいだろう。でも、人間の作り出したものなのだから、何かしら対策できていいはずだ。普通の銃なら一発目を避ければ、次までの時間がある。うーん、どうしたものか。

「どうしたぜよ? いきなり黙り込んでしもうたが」
「あ、ううん。何でもないさ」
 六連発の短銃だから、当然六発撃つまで待つというわけにも行かないし、やっぱり撃つまでが勝負ってワケかなぁ。

「出会茶屋で男と女が二人きり」
 急に神妙な顔で才谷が呟き、私は顔を上げる。

「やっぱな~んもせんちゅうのは、気がひけるっちゅうコトかのう!」
「あぁ?」
「それならそうとゆうてくれれば、ええんじゃ」
 迫ってくる才谷に逆に近づき、私はその懐に入る。そして、彼の手から奪い取った銃を喉元に突きつけて見せた。

「こういう風にも使えるな」
「え、えずいぜよ~、葉桜さん」
 私は才谷から少し離れてから、にっこりと笑って焦点を彼から外した。よしよし、そういえばとあの時の才谷のように構えてみる。

「ふふふ、似合う?」
 呆然とした顔から苦笑に変わった才谷の笑顔に、私は内心で動揺した。今日はどうにも調子が狂うのは、彼があまりにらしくないから、私は釣られてしまったのだろうか。

「危ないきね」
 私は構えていたのに、あっさりと才谷の腕に捕われて。気が付けば、短銃も取り上げられていた。いつ動いたのかさえ、気が付かなかったなんて、やはり才谷は相当に強い男に違いない。

「そんなに強いのに、どうしてそんなものを持っているんだ?」
 しかし、私の問に才谷は何も答えてくれず、ただ神妙な笑顔でそろそろ出ようかと云った。

 店を出てすぐ、私は後ろから強く才谷に抱きしめられ、耳元で囁かれた。

「おまんは気が強うて、ええ女じゃ。しかし、わしとは結ばれん運命にある女かもしれんのう」
 強く薫る才谷の匂いは香じゃないと、このとき私は初めて気が付いた。この人に染み付いているのは海の潮の香りだ。どこまでも広く大きな海原の香り。

「梅さん」
「ほいたら、またな」
 走り去る影に言えなかった言葉を悔やみ、私は一人唇を噛む。結ばれない運命だなんて、そんなことよく分かってる。相手が誰であろうと、そんな運命が自分には決してやってこないことも、よく、わかってるんだ。

 行けるものなら、たぶん私は才谷と同じ道を歩きたい。その道の先に私の望む未来がある。だけどーー。

 仰いだ空には大きな雨雲が流れている。あの雲の流れはきっとこの先の運命と同じで、新選組はますます苦境に立たされる。だけど、近藤も土方も皆も絶対にその道をまっすぐに進んでゆくだろう。

 徳川の最後の時が近づいているのを体で感じているのに、私はまだ、迷ってる。皆と居たい。その気持ちが、役目を揺らがせる。せめて、近藤を助けるまでは去れない、と。

 私の心を代弁するように、急な雨が降り出す。泣きたい気持ちを駆り立てて、私は雨の中へと飛び出した。

あとがき

あ、殴ってない(マテ。
もしかして、梅さんを殴ったり蹴ったりしないことのほうが珍しい?
(2006/07/13 17:31)


公開
(2006/07/19)


改訂
(2013/04/03)