町は歳末売出中で大賑わいだ。
「いっぱい買いましたねー」
新選組でも例に漏れず、数人で買い出しにきた私達。他の隊士は先に返して、斎藤さんと二人で少しだけ寄り道をした。
「でも、みんな掃除してるのに私だけお団子いただいちゃってもいいんですか?」
「…あぁ」
常から部屋の掃除をしているので自分の心配はないのだけど、屯所内の掃除の様子も気になる。
「おまえはいつもやってるからな。今日ぐらいは他の奴にやらせておけ」
そうは言っても、気になるものは気になる。
「…おい」
やっぱり寄り道なんてしている場合じゃ。
考え込んでいる私の目の前にいきなり斎藤さんが迫った。
「さ…っ!?」
ぺろりと、口端を舐められてすぐに離れる。
「…甘い」
「な、何をしているんですか!?」
「…口元についていた」
「そ、それは、わかるんですけどっ」
じっと見つめてくる視線が訴えてくるコトに気がついて、ひくりと口元が引きつる。この目は、狙っている目だ…っ!
「帰りましょう! 早く帰らないと土方さんに怒られますっ」
逃げるように屯所への道を戻る間、私の気が休まることは決してなかった。