手桶でじゃぶじゃぶと雑巾を洗い、絞ったそれをひとまず置いてから、はーっと自分の両手に息を吹きかけた。
流石に冬の拭き掃除は手が悴んで痛い。はーっと吹きかける息さえも白くて寒そうだ。
その手をさらに大きな手が包み込んだ。
「沖田さん!?」
はーっと吐き出される白い固まりは私の吐き出す息よりも大きいのにとても暖かい。でも、それ以上に包んでくれる手から伝わってくる体温が熱い。
「少し休んだらいかがですか? こんなに手が冷えてしまっては、霜焼けになってしまいますよ」
こうして言ってくれるのは有難いのだけど。
「それに少し身体を動かした方がいいです。良ければ、僕と道場で稽古でも」
「嫌です」
手を振り払って、少し温まった手で置いておいた雑巾を掴む。
「暖めてくださって有難うございます、沖田さん。でも、今は掃除の時間ですからね?」
沖田さんもちゃんとやってくださいと叱ると、はははと笑いながら、どこかへ行ってしまった。