幕末恋風記>> 本編>> (慶応四年葉月) 20章 - 報恩

書名:幕末恋風記
章名:本編

話名:(慶応四年葉月) 20章 - 報恩


作:ひまうさ
公開日(更新日):2007.3.14
状態:公開
ページ数:4 頁
文字数:7229 文字
四百字詰原稿用紙換算枚数:約 5 枚
デフォルト名:榛野/葉桜
1)
揺らぎの葉(150)

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p.1

 慶応四年葉月、深い緑の真ん中で深くふかーく葉桜は息を吐いた。ここ最近はなかったからてっきり自分に方向感覚がついたものと思っていたが、どうやらそれらはすべて決まっていたことらしい。そして、流れを変えようとするときに必ず自分に訪れる不運ーー。

「あーもう! 時間がないってのに~っ」
 久々に葉桜は迷子になっていた。しかも今回は質が悪いことに、どれだけの距離を歩けば人里まで出られるのかどうかもわからない。本人としては、真っ直ぐに一直線に会津へと向かっていたはずなのだが、いっこうに着く気配はない。というかまったく人に行き会わないというのもどうだろう。多くの軍が会津へと向かっていったという情報があるのに、自分の目の前には生き物が全く出てこない。

 立ち止まって木立の間から僅かに見える空を仰ぎ、あーと意味のない言葉を吐き出す。何でも良いから、今は道案内が欲しい。と、思ったところで出てくるわけもない。道端に落ちている小枝を拾い、何の気なしに後方へと放り投げる。向いた方へ行けば、辿り着くかもしれない。少なくとも、自分の勘よりは当てになるだろう。

 そう考えたのに、その小枝は高く放りすぎて、木の枝に引っかかったまま落ちてこない。

「困ったな」
 ふむ、と近くに落ちている小石を拾い上げ、その枝めがけて軽く放つ。それは狙いを外して、越えてしまって。

「むー」
 不満だが向きになっても体力を消耗するだけなので、葉桜は道を逸れ、木によりかかって腰を下ろした。少し休んでから、先を進もう。焦ったところでどうにか出来るわけではない。必要なのは、冷静さ、だ。

 両目を閉じて、深く意識を沈める。どこまでも、どこまでも、落ちてゆくように。深く、深く。

 りぃんと、懐かしい鈴の音が聞こえた。辺り一面真っ白で、鈴は自分の手の中にある。

 りぃんと、また鈴が鳴る。同時に風が吹いて、誰かが自分を呼ぶ声がして、唐突に目が覚めた。囲まれているようだが敵意はなさそうなので、もう一度目を閉じる。

「元気そうだな、斎藤」
 口元に自然と安心の笑みが浮かぶ。ここがどこかはわからないが、斎藤がいるということは道を違えてはいなかったらしい。

「怪我をしているのか」
 わずかに焦りの滲んでいる問いかけに首を振る。

「道に迷ったんで、休んでいたんだ」
 手を伸ばすと引き起こしてくれて、立ち上がった葉桜を迷いなく斎藤は抱き寄せた。土と血と汗と埃の匂いがする斎藤は珍しい。彼は葉桜と同じくとても風呂好きで、いつだって清涼な青い風を抱えていたから。

 目を閉じて、斎藤を感じる。ここまで彼がどう戦ってきたかは知らない。でも、彼なりに必死だったというのはわかる。

「幕府軍は、もう北へ向かったか?」
 わずかな身じろぎが肯定する。

「そうか、斎藤たちはここで戦うことを選んだか」
 安堵半分。残念な想いも半分。相容れないそれを飲み込んで、体を離す。

「会津は落ちるとわかっていて、残ったんだよな? でも、果てるつもりじゃなく、会津を生かすために」
「そうだ」
 しっかりとした決意に柔らかな微笑を返し、ゆるりと小さく頭を下げる。

「ありがとう」
 とても、とても義理堅く、頑固な人だと知ってはいたけれど、それでも残ってくれたことに礼を言わずにはいられない。

「礼など…」
「黙って聞いておいてよ。…初めてなんだ、こーゆーの」
「?」
「同じものを守って戦ってくれる人は、今まで誰もいなかったから」
 いつだって、葉桜は一人だった。一緒の戦場で背中を預けて戦っていても、葉桜の本当に守りたいものはいつだって人と違っていて、いつだって取り残されてきた。一緒にいるから余計に孤独を感じるのだとしても、せめて表面だけでも一人になりたくなかったから、一生一人で抱え続けていかなければならない孤独なのだと思っていた。

 斎藤ならば、それを守るという予想は出来ていた。それでも、確かな確証とまではいかなかったのは期待を裏切られたくなかったからだ。これ以上、期待して、裏切られるのには耐えられそうになかった。

「…葉桜」
 嬉しくて溢れてくる涙を堪えて、言葉を紡ごうとする葉桜を強く斎藤が胸に抱きしめる。

「かつて俺は、山南さんからおまえの話を聞いた。おまえは壬生浪士組に入隊すると同時に容保様への忠義も誓ったのだと。そのために、新選組の全てを容保様にご報告申し上げていたのだと。そんなおまえがこの会津を見捨ててゆくことはないだろうと考えたとき、俺は残ろうと決めた」
「葉桜との約束を守るために」
 やっと約束を果たせる、と幸せそうな声が響いてきた。身体中を響かせるその音色に涙も止まる。

「約束って、」
「ああ、一人にしないと言っただろう?」
 巫山戯ていると、正直思った。だって、一人にしたのに、その上にそんなことを言うなんて、狡すぎる。

「そのために、先に会津へ行った、と言うの?」
「おまえは会津公のためならば、一人ででもここへ残っただろう?」
 ひどい人だ。すべてわかっていて、それで、自分のために残ったなどと言われたら、どうしたらいいのかわからなくなる。この泣き腫らした顔を上げて笑ってやるべきか、それとも嘘吐きと詰るべきか。受け入れる、べきか。

「俺は、おまえ一人をこの地においていきたくなかった」
「どう、して…?」
「そんなことをしてみろ。俺はおまえのことが気になって戦いに集中できやしないだろう」
 それじゃあ今までは気にならなかったのかと悪態をつきたくもなってくるけれど、全てを押さえ込んで葉桜は斎藤の胸に強く顔を押しつけた。

「…馬鹿」
 やっと言えたのはただそれだけで、なのに、斎藤からはとても幸せそうな気配しか伝わってこなくて。こんな負け戦に加わらせてしまったことが申し訳ないけれど、自分を心配してくれる気持ちがただ、心の底から嬉しかった。



p.2

 会津の戦況は本当に手の打ちようがなくて、斎藤ら会津居残りの新選組が鶴ヶ城城下に着いたときには既に籠城策が取られていた。入城かなわなかった斎藤らは鶴ヶ城周辺での断続的な遊撃戦を展開することしかできず、刻一刻と悪化してゆく戦況を打破できぬまま、ひたすらに剣を振るって戦い続けた。

「行けーっ! 下がるんじゃない! 戦え! 戦い抜くんだ!」
 斎藤の指揮のもと、何度も仲間を助けつつ、戦い続けたがそれにも限度がある。やはり、圧倒的な戦力差は歴然で、剣で戦えるだけマシと雖も、誰かを休ませるだけの余裕もない。そうでなくとも、時折体がまともに動かなくなりつつあるというのに。

「うぉーっ!!」
 迫ってきた敵に腕を上げることも出来ない葉桜だったが、その敵を斎藤が難なく切り捨てる。相手の腕はさほどではないのだ。ただ、数が多い。多すぎる。

「何をしている!」
「恩に着る、斎藤。なに、ちょっと疲れているだけだ。頑張ろうぜ!」
 力は無限ではない。そして、徳川の倒れる影響は確実に葉桜の体を蝕み、同時に自らの課した呪術によって起こる渇きを押さえながらの戦いはひどく消耗する。だが、斎藤は何も言わなかった。ただ、背中を預けて戦い続けてくれた。ただ、ありがたかった。

 夜になり、葉桜たちは如来堂村に陣を構えた。提案したのは斎藤だ。

「鶴ヶ城の籠城戦には参加できなかったが、ここには上杉がのこした神指城の遺構がある。上杉家が反徳川のために築こうとした巨大城郭。今そこで徳川恩顧の俺たちが戦うとは皮肉なものだが、とにかく堀と土塁があるだけでもありがたい。これなら多少は持ちこたえることができそうだ」
「多少は?」
「そうだ」
 身も蓋もない斎藤に思わず笑いが零れると、伝染したように隊士たちの顔にも笑みが浮かぶ。ひさしぶりにみなを休ませることもできるだろう。そして、自分も今の間に少しでも体力を取り戻さなければ。

 休息を指示してから、葉桜も辺りを見張りやすい位置で片膝を抱え、頭を乗せる。そうして、目を閉じて、考える。勝つための手はないのか、と。しかし、いくら考えても今の人数で勝てる作戦など思い当たらなかった。

「ここにいたのか」
 夜半も過ぎ、月も沈み始めた頃、斎藤が現れた。

「斎藤は眠らないの?」
「見張りもたてず全員眠ってどうする」
「はは、お互い性分だよね」
 隣に斎藤が腰を下ろす。同じ目線が少し照れくさい。

「眠れないのか?」
 髪に触れる手を感じつつ、膝に顔を埋めたまま目を閉じる。何か言いたいのに、言葉にならなかった。それを察しているのか、優しい声が降ってくる。

「じゃあ、少し話をしようか」
 本当に珍しい。こうまでも珍しいことが続くと、もしかしたらと期待してしまいそうになる。この戦況を覆す方法なんてひとつも浮かんでいないのに、勝てると、信じてしまいそうになる。答えない葉桜の代わりに落ち着いた声音が響いてくる。唄のように静かに静かに静けさを壊さない音を聞きながら、深く意識を沈めてゆく。そうして、音が途切れた頃に、ふっと意識が返った。

「斎藤?」
 顔を上げて彼を見ると、嬉しそうに微笑んでいる。夢、だろうか。

「よく眠れたか?」
「え? 私、眠っていたか?」
「ああ」
 そっと髪を梳かれる心地よさに目を閉じる。これがいけない。気持ちよくなってしまう。

「いつも諦めないところが」
 なんだ、と薄めを開けて、続きを待つ。

「そういう葉桜の姿勢が好きだ」
「!」
 何を急に言い出すのだろう、この人は。そういう状況じゃないのに。

「戦場で死を意識したものを待つのは死のみだ。生半可な死の覚悟は戦いで勝利する意思の欠如に直結する。もう十分だろう、やれるだけやった、とな」
「葉桜にはそういうことがない。どれだけの勝利が目の前にあっても、少しの油断もなく、少しの躊躇いもなく、ただ生のみを望み続けるおまえが、俺は好きだ」
 買いかぶりすぎだ。いつだって、自分は死を目の前にし続けてきた。目の前にある死から目を背けてでも、戦い続けるしか道はなかった。それだけが、生きる方法で、目的だ。

「肝心なことは戦い続けること、最後まで戦い抜くことだ。俺が何故そのことにこだわるか、おまえにだけは言っておこう」
「普段から俺は部下に対して戦闘中は生死のことを考えるなと言ってきた。肝心なのは戦い抜く意思だと。それがどういうことか分かるか?」
 戦い抜くというそれの意味は、もうずっと知っていた。いや、それだけは誰に教わったわけでもなく、葉桜は知っていた。

「戦い抜くということは、つまり生き抜くということだ。戦って、戦って、そして最後まで戦い抜くことができたなら、少なくともそいつはまだ死んじゃいない」
 そうだろう、と投げかけると大きく斎藤はうなずいた。

「何故、今更そんなことを言い出すんだ?」
「おまえが聞いたのだろう? どこが好きなのか、と」
 そんなことを話したような気もするけれど、あの時にそれは終わった話のはずだ。

「あれから、どうして葉桜でなければならないのか、考えた」
「で、今のが?」
「理由のひとつだ」
「ひとつ?」
「あとは、考えてもわからなかった。あとはただ、葉桜が好きだという想いしか残らない」
 適当な言い草に、笑いを零す。斎藤らしいというか、なんというか。

「俺たちは戦いの中に自分を見出すような人間だ。なのに周りの者には死なないことを望んでいる」
「欲張り、だよ。仲間が絶対に死なない戦いなんてありえないのに」
 剣を持つ限り、誰も死なない結末なんてどこにもない。少なくとも、これまでの葉桜の人生の中に、そんな事はなかった。

「俺はまだ、当分はこうしておまえと二人の時間を楽しみたい。だから、勝手に死なれると困るんだ」
「斎藤」
 いつもいつも思うのだが、顔色一つ変えずににそういうことを言われると、言われている方が死ぬほど恥ずかしい。かといって、葉桜自身には絶対に口には出せないだろう。思っていたとしても、想いを口にすることはできない。そう、定められている。

(あれ?)
 何故、誰が、と考え始めた葉桜を急に斎藤が抱き寄せた。

「どんなことがあっても、俺はおまえを離しはしないぞ」
 すごく直情的な愛情表現は独特で、斎藤の腕から熱さが伝わってくるようだ。きつく抱きしめる苦しいぐらいの力の強さがとても心地よい。守られていると、戸惑うことなく感じられる。

 体が揺らぎ、ゆっくりと地面に倒される。

「わ、さ、斎藤!?」
 ほとんど押し倒されるような体勢になり、さすがに焦る。確かに斎藤の心は響いたが、まだそういう関係になるほどではないというのに。

「強引すぎだって」
 もちろん、この男だってそういうつもりではないのだろう。戸惑う斎藤を見上げてくすくすと笑う。

「いや、俺はただ、もうそろそろ眠った方がいいと」
「だからっていきなり押し倒すのはどう考えてもナシ」
「そうか、すまない」
「ふふっ、もういいよ」
 風が火照った頬を冷ましてくれるのに、再び目を閉じる。辺りは静かだけれど、今はもう穏やかな静けさだ。

「葉桜、この戦いが終わったら…」
「終わったら?」
 何の気なしに聞き返してみたが、「いや、今日はもういい」といういつものようによくわからない答えしか返ってこなかった。この戦いが終わったら、自分にはまた次の戦場が待っているだろう。だけど、今は。

「とにかく、戦い抜こう。そして、その先にあるものを手に入れよう」
「ああ、そうだな」
 戦いの果てにあるものは、満天の星空を眺めていても見つからない。だけど、この四面楚歌の戦場で過ごす二人きりのかけがいのないひとときを胸に、明日は死力を尽くして戦い抜こう。誰一人かけることのない戦いはないだろうとも、自分の持てる全ての力で。



p.3

 慶応四年九月五日、目を覚まして空気の不穏に気がついた。昨日までの戦場とはどこかが違う。

「どうした?」
「いや…なんでもない」
 なにがとはっきり言えるワケじゃない。ただ、違うと感じた。それは大きな津波が起こる前の凪のようなものではなく、穏やかすぎる気配。どう考えてもここは四面楚歌の戦場なのに、あり得ない。

「敵の軍勢、数百! 我々の、十倍以上の兵力ですっ!」
 斥候に向かった隊士の報告にかぶりを振る。気のせいだろう。そんなことを気にしていては勝てるものも勝てなくなる。

「みんな、ここまでよく俺についてきてくれた、ありがとう。だが、これだけ分の悪い戦いだ。勝とうとは言わない。でも、せめて、力の限りを尽くして戦い抜こう」
 隊士たちに語りかける言葉は、葉桜の心と同じだった。後ろからそっと腕に触れる。

「ここ会津こそ、俺たちの第二の故郷だ!! 故郷のために戦い抜こうじゃないか!!」
 力強い鬨の声に葉桜も合わせる。自分の役目は、今は。

「行くぞっ!!」
 圧倒的なこの戦力差を前に、一人でも多くの隊士を「生かす」ことだ。



p.4

 戦況が変わったのは、日が中天へとかかる直前だった。敵の足にでてくる乱れを訝しむ。

「何かあったかな?」
「そのようだ」
 斎藤と背中合わせで語りながら、囲む敵を斬り伏せてゆく。互いの息はまだ上がっていない。それはいいのだが。

「良い情報だと嬉しいね」
「……抜けるぞ」
「了解っ」
 隙をついて、囲みを突破し、あっさりと葉桜たちは城下まで抜け出した。そこで葉桜たちはとんでもない情報を耳にする。

「榎本さんが新潟港を抑えた!?」
 あの榎本武揚が江戸を離れ、新潟港への攻撃に加わったというのだ。航路を抑えた旧幕府軍は、現在急速に戦況を盛り返しつつあるという。

「それで、あの…」
 伝え聞いてきたという隊士が口ごもる。何故だろうと、不思議そうにしている葉桜を前に、戸惑っているようだ。

「はっきりと確認したわけではないようなのですが、どうも元新選組という人物が関わっているようなんです」
「元新選組というと、山南さんか?」
「あ、はい。たしかそういう名だと言ってました」
 聞き間違いだろうか。そうか、聞き間違いだ。きっとそうに違いない。かといって、元新選組だと堂々と名乗って動く人物なんて、このご時世では限られてくる。そうとうの自信と覚悟がなければ、そう易々と名乗れるわけもない。この状況でおとなしくしていられるはずもないとは思ったけど、見えないところで動いてくれているとは。

「…はぁ~」
「また何かわかったら知らせてくれ」
「はい!」
 隊士を返し、斎藤がこちらに向き直る。

「行くのか?」
 すでにわかっている様子に苦笑する。

「いいや、山南さんがいるなら任せておいた方がいいだろう。下手に会いに行ったら、京まで引きずり戻してしまいそうだ」
 戦場に置いておきたくはないが、本人の選ぶ道を葉桜に止める理由はない。

「斎藤はどうする?」
「俺は、」
「って愚問だな。会津の不利はまだ変わらないし、離れられないよな」
「…葉桜」
「私は、行かないと」
 ぐいと肩を掴まれ、痛さを堪えながらも微笑む。

「この先の戦いはみんなに任せて、私は私にしかできないことをしなければならないから」
 斎藤が口を開いて何かを言ったが、すべて風にかき消されて、葉桜には届かなかった。

 わけもわからず、重ねられる口づけに目を閉じる。熱くも冷たくも感じるそれを覚えて、あっさりと葉桜は去っていった。まるで、すぐにでもまた会えるというような調子だったけれど、それは間違いだとどんなに鈍い人間だってわかる。

「斎藤先生、行ってください」
 立ち止まっている斎藤の背を押す声は、力強い。ここまで共に戦い続けてきた仲間たちを置いて、それで。

「いいのか?」
「はい」
 問いかけに返ってくる返答はまったく躊躇いがない。

「会津は俺たちで守りますから、どうか葉桜先生を」
「葉桜さんを追ってください」
 暖かな同胞の声に深く感謝し、斎藤は頭を下げた。

「すまない。ここは、任せる」
 すぐさま葉桜を追いかけた斎藤が追いつくのは今日か明日か、それともずっと先か。それは誰にもわからない。ただ通り抜けてゆく風を同じく二人が感じ、空を仰いでいた。



あとがき

すいません、スランプです。
あとで書き直すかもわかりません。
なんだか気持ちが落ち着かなくて、自分で入り込めない。
まあ多分コルダ2のPV聞きながら、たまにアリスやりながら書いているせいもあるんでしょうけど。
やりたいゲームが多すぎて、もうどれから手をつけてイイやら。
結果、気が逸れたら別のゲームをつまみ食いしているのでどれも終わらない(ォィ。


斎藤さんはどのイベントも印象的すぎて忘れがたいですよね。
最後の最後まで魅せてくれる人なので、最後の最後はどこで書こう(聞くな。
とりあえず、会津編はここまでです。
ゲームや史実と戦況をちょっと(~)ばかり変えましたが、さてここからどうしよう。
話を戻すべきか戻さざるべきか。
本当にあと2章分で終わりそうなのが嬉しいような寂しいような。
3月にはもってこいの気分ですね。
もうしばらく、この拙い夢にお付き合いいただければ幸いです。
(2007-03-14)