明るい灯に目を凝らす。といっても陽は高いし、戸外は明るい。少し視線を外せば、池の鯉が斑の体をくゆらせていて、とても涼しそうだ。
「余裕だな、出来なきゃ飯抜きだぞ」
男の忠告に慌てて、灯に向き直る。
最後の鍛練は剣風で目前の灯を消さずに彼に一刀を当てることだ。もう一週間も続けているが、まるで出来る気がしない。
俺の余りのふがいなさに、飯まで賭けられた。それでも、出来る気がしない。
「できそうか?」
つぅっと首筋を汗が滑り落ちる。このままではまずい。
俺が動こうとする前に、静かに男が言った。
「灯はテメェの護りたい女だ。向こうには女の背中を襲おうと狙う獣がいる。どうやって助ける?」
かすかに吹いた風で灯が消えそうになった。
思うより先に体が動き、風音さえ立てずに、それを斬っていた。
「…やりゃあできんじゃねェか」
ニヤリと笑う男の左腕が、大きく切り裂かれている。
「灯は命と同じ、風は剣と同じよ。瞬く間に失う」
「失うものか」
カラカラと去って行く男の背に強く言い返し、俺は護るべき主の下へ向かった。
風が灯を凪いでいった。