神社の境内で座る私の手に白い息がかかる。包む掌は大きくてがさついているけど、温かい。
「はぁ~」
その息がかかるたびに、びくりと震える私を永倉さんは面白そうに見ている気がする。
「も、もういいですよ」
「馬鹿、まだ冷たいまんまじゃねェか」
「これぐらい平気、」
言葉の途中でまた手に息を吹きかけられ、また私は身体を震わせる。
「だいたい、おめェが店に入るのも嫌がるし」
「永倉さんのいうお店って、高そうな場所ばかりじゃないですか」
「そんなことねェって」
「それにーー」
文句を続けようとして、私は口をつぐんだ。
「それに、なんだ?」
「なんでもありません」
「何急に拗ねてやがる」
「拗ねてませんっ」
ーー綺麗な女の人にちやほやされてる永倉さんを見たくないから、なんて、絶対言えない。
顔を背けた私をしばらく眺めた後で、永倉さんは堪えきれずに吹きだした。笑いながら、私の頭を撫でて、引き寄せる。なんの予測もしていなかった私は、当然永倉さんの胸に倒れこむ。
「わ」
永倉さんは揺らぐことなく私を抱きとめ、耳元で囁いた。
「カワイイなぁ、おめェは」