読切>> テーマ(500文字制限) - 「面」>> テーマ「面」 - 賽

書名:読切
章名:テーマ(500文字制限) - 「面」

話名:テーマ「面」 - 賽


作:ひまうさ
公開日(更新日):2009.2.20
状態:公開
ページ数:1 頁
文字数:409 文字
四百字詰原稿用紙換算枚数:約 1 枚

前話「テーマ「面」 - 世界」へ p.1 へ あとがきへ

<< 読切<< テーマ(500文字制限) - 「面」<< テーマ「面」 - 賽

p.1

 片手で掴める小さな籐の籠の中で、賽一つだけが廻る感触が伝わってくる。中をのぞくと、聞こえないはずのコロコロと転がる音が聞こえる気がした。

 くるりと手首を回す。籠内でからりと賽が廻る。

 くるり。からり。くるり。からり。くるり。

「っ」
 不意に背後から手首を掴まれ、強く籠の口を畳に叩きつけさせられる。その拍子に中の賽が宙を舞う。

「痛いよっ!」
 後ろに唐突に現れ、邪魔をした男を振り返れないままに抗議する。

 てん、てん、てん。

 畳の上を転がる現実の賽の音に目を向け、驚いて見開いてしまった。

「ちっ、壱か」
「やった、壱だっ」
 落ちた賽を手首を押さえられたままに捕ろうとしたら、背中に飛びきりの重圧がかけられる。

「飯食いに行こうぜ、イチ」
「壱が出たから、ジローの奢りだよっ」
 少しの間の後で、起き上がることも出来ない私をからかうように、彼は更に体重を乗せてきた。

「イチの分際でいー度胸じゃねぇか」
「ぎゃー! ごめんなさいーっ」

あとがき

 時代物。
(2009/02/12)


公開
(2009/02/20)