遠くで響く寺の鐘の音で、はっと私は目を覚ます。辺りは薄暗く、縦に空間裂いて、紅い線が伸びている。体を起こし、傍らの脇差しを手に立ち上がり、腰にさす。大きな欠伸を噛み殺しつつ、戸を明ければ、そこは一面紅いの世界だ。小さな社寺の境内にしては不自然なほど、一面に敷き詰められた白い砂利も紅い水越しにみるのと変わらない。
「暦さん」
穏やかにかけられる声音ながら、私はそれから多々良を踏んで間合いをとり、大刀に左手を添えた。そのまま躊躇う事なく、抜刀しつつ空を斬る。否、空を斬ろうとしたわけではなく、単に相手に避けられたまでの事。その相手は危ないなあとぼやいてはいるが、焦った様子はない。
「刻限になったから起こしに来たのに、ひどいなぁ」
構えを解かない私を前に彼はーー山崎は息を吐いて笑った。
紅に溶ける彼の笑顔を思い出したのは、やはり今だからだろうか。ズキズキと痛む額に片目は頭からこぼれ落ちる紅に染まっていて。
ーーもう、怪我の痛みもない。
さっきまで聞こえていた剣騒や大砲も聞こえない。
ーーねえ、山崎。もう、いいよね? もうそこに行っても、いいよね?
唐突に歴史モノを書きたくなった。
ぎんたまでもばくれんでもない、オリジナルで新選組メンバーを書いたのは初。
しかも最初が山崎ってどうなの。
影が薄いよ(笑)。
ヒロインの名前は某あずまんがのヨミからとってます←どうでも
(2009/10/04)
公開
(2009/11/4)