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書名:読切
章名:テーマ(500文字制限)

話名:テーマ「雪」 - 雪妖精


作:ひまうさ
公開日(更新日):2009.12.19
状態:公開
ページ数:1 頁
文字数:441 文字
四百字詰原稿用紙換算枚数:約 1 枚

テーマ「雪」

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p.1

 一面の白に足を置く。

 ざくり。

「わあ、埋まる、埋まるっ」
 雪にブーツを埋めて、両手をばたつかせる彼女が嬉しそうに騒ぐ。見たことがないというから連れてきたスキー場。車の中では声もあげなかったのに、降りた途端にこれだ。

「おい、あんまり離れるなよっ」
「うんー」
 ざくざくと子供のようにはしゃぐ彼女を俺は車のそばで眺める。俺はすべてを白に隠す雪が、あまり好きじゃないんだ。寒いし。

 はあと吐き出した俺の白い吐息の向こう、楽しそうに騒ぐ彼女は絵本の妖精みたいで可愛い。いつまで見てても飽きない。

 でも、久しぶりの旅行だし、いい加減に宿で一緒に暖まりたいし。手首の時計に目を落とし、顔をあげる。

「わあっ」
 ほんの一瞬のことだ。

 時計から目を上げたら彼女の姿はなく、俺は急いで彼女を最後に見た辺りまで走った。

 まさか、まさか、と怖れる俺はすぐに彼女を見つけて、安堵する。

「ーー心配させんな」
 手を引いて、腕に抱きしめた彼女は、まだ興奮しているようで、小さな体を一杯に広げて、抱きしめ返してきた。

あとがき

新規
(2009/11/3)


公開
(2009/12/19