「にいに、ぴーこ起きないの」
泣きながら訴える幼い妹の声で、眠っていた僕の意識は一気に覚醒した。ぴーこは妹が昨夜の縁日で買ってきた雛だ。僕が眠る前までは元気だったが、妹の手から僕が左手で受け取るとぴーこは既に冷たくなっている。
「にいに、ぴーこどうしちゃったの?」
雛が起きない意味を幼いながらに頼エしているのか、目に涙をいっぱいに溜めて、妹は僕に問いかけてくる。
明日も一緒に遊ぶんだと言う妹の頭を、僕は右手で優しく撫でる。
「ぴーこは、」
死んだんだと僕が告げる前に、妹の目から大きな粒がこぼれ落ちた。それをきっかけにように、ぼたぼたと涙が妹の頬を伝う。
「ぴーこ、死んじゃったの?」
ああやっぱりと僕は空いた腕を伸ばして、妹を胸に抱きしめる。
「違う、違うよ。ぴーこはきっと明日が待ちきれなかったんだ。だから、ちょっと体を置いて出かけてるだけだよ」
嘘がバレないように、僕は妹が顔を上げられないように腕の力を強める。
「明日になったら、きっと元気な姿を見せてくれるから。だから、あーりも今はおやすみ。明日になったらまた遊べるから」
明日になったら、新しいぴーこを連れてくるから。どうか、泣かないでーー。
なんで「死」のイメージが強く出るかな。
実はよく使う兄妹。
オフラインで一度だけ書いた長編の二人。
(2010/04/23)
公開
(2010/06/04)