今日もいい天気だなぁと店を開けていると、ほどなく人が入ってきた。
「美緒姉ちゃん、おはよー!」
「おはよー、きり丸。バイト帰り? 朝ごはん食べてく?」
「食う!」
満面の笑顔で応えるきり丸は今日も元気なようだ。きっとバイト代が入ったか小遣いをもらったか小銭でも拾ったのだろう。そういう少年だ。
私は奥によういして置いた自分用の炒飯をとってきて、きり丸の前においた。
「いっただっきまーすっ!」
大きな声で挨拶をして、一気に炒飯をかっこむきり丸の前に座り、私はその姿を眺めるのがたまらなく好きだ。見ているだけで、気持ちがほんわかと暖かくなって、幸せな気分になる。
「あれ、美緒姉ちゃんは食わねぇの?」
「もう食べたか……」
きり丸に答えている途中で空腹の音が聞こえてきて、私はしまったと目をそらす。
「……もしかして、もしかしなくても、これって美緒姉ちゃんの朝飯だったんじゃ……」
青ざめた顔のきり丸に私は笑顔で応える。
「子供はそんなこと気にしなくていーのっ」
材料がないわけじゃないし、私の分はきり丸が帰った後にまた作ればいいんだし。そう言ったけど、きり丸は青い顔のままだ。
「お、俺が作るっ!」
「え、バイト代は出ないよ?」
「いーから、美緒姉ちゃんは座ってて。……先輩たちに知れたら、やっべー……」
なんか小さくつぶやいているみたいだけど、作ってくれるならと私はきり丸に材料を示して、他の作業をすることにした。今日の茶菓子はなんにしようか。違った、何を団子に入れようかなぁ。
「……美緒姉ちゃん、なにしてんの?」
「んんん、今日のお茶菓子はカラメル焼きにしようと思ってー」
「なんで唐辛子なんて持ってんだよ」
「隠し味?」
何故か取り上げられてしまった。甘辛のカラメル焼きとかいいかなーっと思ったのに。
じゃあどうしようと考えている間に、きり丸からできたーと声が掛かる。
「はい、美緒姉ちゃんどうぞ」
「わーおいしそー。ありがとう、きり丸」
きり丸が作ってくれた炒飯はいつも私が作っているものよりも美味しくて、食べながら軽くへこんだ。私のがお姉さんなのに、きり丸のが料理がうまいなんて。
「きり丸はいいお嫁さんになれるよね」
「は?」
そんなこんなの何気ない朝のひとときだったのでした。