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書名:ハリポタ(親世代)
章名:読み切り

話名:親世代@ジェームズ(instability) - instability


作:ひまうさ
公開日(更新日):2003.3.18
状態:公開
ページ数:1 頁
文字数:4362 文字
四百字詰原稿用紙換算枚数:約 3 枚
デフォルト名:///カミキ/ミオ
1)

ハッフルパフ生物語1

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p.1

 目に痛い空だ。

「幸せ?」
 ここには私以外の誰もいない。だから、問いかけに返すことができるのも私だけ。私が答えを見つけられなかったら、たぶん誰も返さない答え。

 ホグワーツに来て、友達をいっぱい作って、それなりに恋もした。ーーような気がする。楽しいことも辛いこともそれなりにあった。全部それなりに生きてきた。答えを出すには早過ぎるのかもしれない。

「しあわせ…?」
 パズルが全部完成してしまったような感じがする。完成してしまったパズルを、私は壊す。壊して、また、作り直す。その繰り返しを何度もやったけど、現実にはまだ何もやってない。一つ一つがあるべき場所にあって、ひとつ残らずはめてしまった。ひとつぐらい無い方がいいのに。

「壊れちゃおうかな…」
 自分のいる搭とは別の搭で爆発が起きた。たぶん、悪戯仕掛人がなにかやっているのだと思ったけど、それ以上の興味はわかない。

「壊すのは、いやかも…」
 彼らがどんな悪戯をしても、ホグワーツは大した痛手を受けないようだ。でも、人間はそれほど強くできていない。

 ネクタイは黄色と黒。ハッフルパフだ。心優しいハッフルパフ生は争いを好まない。ーーというわけでもない。臆病だといわれる。自覚もある。

 誰にでも優しい、自分。それがイヤになることも多い。幸い、友人にも恵まれているけど、それだけ。

「それなり人生か~ぁ?」
 ぱたりとその場に寝転んで、目を閉じた。世界が暗闇になる。

 瞳を閉じてしまうだけで、簡単に私の世界は終ってしまう。そして、それを気にする人も多くないといいと思う。だって、私はこころやさしい、ホグワーツ生だから。

「あ、先客だ」
 人の上がってくる音に気がついていた。でも、関りたくなかったので、狸寝入りを決めこんだ。どうせ、悪戯の後で逃げまわってるだけだろう。

「早いねージェームズ」
「ピーターは、リーマス?」
「こ、ここ…」
 グリフィンドールの無敵の首席の声は、どうも近づいてきているような気がする。気のせいか?

「あれ? その子、ミオ?」
 リーマスとはそれなりに話したこともある。それなりな関係だ。つまり、しゃべったことがある程度の人。(友人が好きなのだ)
「そうそう。ハッフルパフだったんだね」
「しらなかったの、ジェームズ?」
 ジェームズとは話したことはないけど、リリーがよく話してくれる。(リリーが好きなのだ)
「珍しいね」
「しってるの、ピーター?」
「うん。イイ人だよ」
 ピーターは…嫌いじゃ無いが好きでも無い。つまり、どうでもいい。

 ひとり足りないか。たしか悪戯仕掛人は4人のはずだけど。最後のひとりは、たぶん友人の中でももっとも人気の高いシリウス。家柄良し、顔良し、成績良しのお得物件なんだそうだ。

 どうでもいいけど、寝ている人の髪を勝手に弄るのはやめてほしいものだ。肩口までの髪は引っ張られると、痛い。

「起きないかな…」
「やめなよ。起すのは」
 すでに起きてるけど、気がつかれてはいないようだ。

「遅いねーシリウス」
「どっちにしてもおごりは決定だな」
「遅れた罰さ!」
 笑うと無意識に引っ張られるんだよ。やめてよ。

「今度はシリウスがくるのと、この子が起きるのどっちが早いか賭けないか?」
 は?

「シリウスのは賭けになんないもんねー」
「ピーターはどっちに賭ける?」
 まてまて?勝手に人を賭けのネタにするなよ!

「それより、ジェームズは何を賭けるのさ」
「リーマスはいつも通り?」
「ピーターは?」
 この場合、先に起きるべきか、それとも寝たままやりすごすべきか。

「てめぇら! 人を囮にしやがっ…て~っ」
 ゴンという何かに頭をぶつけたような音といっしょに、シリウスの叫び声が混じった。

「うわ、馬鹿だね~シリウス」
「君ならやると思ってたけどね」
「痛そ~」
 どうやら本当にぶつけたらしい。頭?本当に頭をぶつけたのかな。

「少しは心配しろよ…」
 どかっと足元に座る音が響いてくる。

「そんなモノ無用だろ?」
「足の早い君が捕まるなんてないって、信じてるからさ」
 なんか情景が浮かぶ。たぶん、2人ともシリウスの両肩に手を掛けて、すごい笑顔でいってるんだろうな。

「そうなのか?」
「僕たちがこんなに信用しているっていうのに、疑うのか?」
「い、いや…」
 あ、そういえば、手が離れてる。動ける、けど、どうしよう。

「そういえば、これで賭けはなくなったの?」
 ピーターが余計な話をむしかえした。忘れていてくれた方がよかったのに。

「なくなるわけないじゃないか!」
「シリウスの財布が空になるまで飲む約束だろう!?」
「…やっぱり謀ってやがったのか~っ」
 どうでもいいから、いいかげん他へ行って欲しい。動けない。狸寝入りだって、楽じゃないんだ。

「僕たち、今日はここでサボるつもりなんだけどね」
 なんだって?

「だから、ここに逃げてきたんだよね」
「ああ、ここは結構見つかりにくいポイントだからなぁ」
 それは知ってる。だから、ここで時間つぶしてたんだし。

「いつまで寝たフリしてるつもりなのかな?」
 ちっ気がついてやがったか。

 観念して青空を睨みつけるために目を開けた。明反応で、視界が揺らぐ。もう一度閉じて、何度か瞬きしてから肘をついて起き上がる。右手側にくしゃくしゃの黒髪で眼鏡の男が見えて、その向こうに鳶色の髪が覗いてる。

「他、行ってよ」
 普段は出さない不機嫌な声をぶつける。ホグワーツの友人たちには一度も言ったことのない低めのトーンで。

 完全に起きあがると、足元にあぐらをかく真っ直ぐな黒髪の青年と目が合う。睨み付けられてるけど、気にせず視線をそらす。興味も無い。

「つれないな~ミオ」
「呼び捨てられる覚えないわね。グリフィンドールの問題児」
 手で髪を梳かして、一応整える。さっき引っ張られたせいで、機嫌も悪い。

「盗み聞きしてたミオに言われたくはないな~」
「勝手にしゃべってたんでしょ、リーマス君」
「あ、覚えてたんだ」
「成り行きよ、なりゆき」
 一瞬、笑顔に深みが増した気がしたけど、関係無い。

「こいつ、だれ?」
 あいかわらず、私を睨みつける男がひとり。

「ピーター君」
「はいぃぃぃっ」
 なんだ、その、引き攣った声は。つか、普段と違いすぎるとかなんとか思ってんだろうな。

 いろいろそんなことを考えながら、とりあえず、精一杯の笑顔を見せてやる。

「こいつら連れて、とっとと他行って?」
 私にしては頑張った。とてつもなく、頑張った。

 いままで平穏に過ごしてきたのは、ここでこうしてたまにサボるっつー目的があったからこそ。これがなくなったら、自分でもなにやるかわからん。

「それは無理だよ、ミオ」
「ここから出られないんだ」
「いいから出てけ」
 ここに私が来るときってのは、とてつもなく精神状態がギリギリなとき。他人を気遣う余裕さえも無い時。そこに近寄ってきたら、私にはどんなことを言われても文句は言えないはずなんだぞ。

「外には、フィルチが待ち構えてるんだ」
「な!? 俺、ちゃんと撒いてきたぞっ」
「近くをうろついてるだろ、ミセス・ノリスが」
 ホグワーツにいる飼い猫ミセス・ノリスのいるところに、管理人フィルチの影あり。とは、いくらわたしでもよく知っている。

「他に逃走方法があればいいのね?」
 ため息をついて、杖を取り出す。

 必要なものはわかってる。あとは、私の力次第。私はクィディッチに興味は無いから、それほどよく見ていたわけじゃない。でも、イメージはある。

Accio(アクシオ)!」
 必要なのは、競技用の練習箒で充分。

 ゴンという音は、目の前で私を睨みつけている男にぶつかった。

「2本で充分でしょ」
「すごいねー、今、2つ一緒に来たよ?」
「って~!!わざとか!?」
 不可抗力です。つか、そんくらい避けろ。

「さっさと行ってよ」
「お前、さっきからなんなんだ? 普段と違…」
 彼がなにかいう前に強く睨みつける。この男とは話したこともないけど、女性関係が派手だという噂も多々ある。正直、好きでは無い。

「うるさい」
 そのまま全員から視線を逸らして、また寝転んだ。

 空はまだ痛いくらいに青くて、白くて、明るい。

「なにイライラしてるの?」
 瞳を閉じる。世界がまたなくなる。

「なくならないよ。目を閉じても、世界は消えない」
 知ってるから、言わないでよ。

「行くぞ」
 足元でようやくひとりが立ち上がった。

「こんな可愛げのないヤツほっとけ」
 あんたらに対して、別に可愛くなんかなくてもいい。

「そんなこといって。シリウスがミオのこと、一番気にしてるくせに」
「ば…っ!!」
「リーマス、どっち乗る?」
「カリカリしてる犬となんて、ごめんだね」
「やっぱり?」
「犬ってゆーな!!」
 あーでも、これを聞いてるだけなら、いいか。別に。

 変なヤツら。でも、これ以上関りたくない連中。平穏無事に学校生活送れればいいんだ。それなりに。

「ミオ、近いうちにお礼に行くよっ」
 無気味な音で、私は跳ね起きた。

 今まで誰にもやられたことはない。頬に音を立てて。キス、なんて…!

「二度とくんなーーーーー!!」
 頬に手を当てる。絶対に青くなってる気がするのに、伝わってくるのは熱だ。こんなことをされたことなんてないので、ひどく動揺しているのが自分でもわかる。

「楽しみにしててね~」
 文句は空に逃げられた。ジェームズとリーマスの姿はあっというまに黒い点になる。どこへ行く気だ。私には関係ないけど。

「あーもう、なんなのよ。今日は!」
「おい」
「なに!?」
 まだなにかやる気なのかと思って、勢いよく振り返ると、少し珍しいモノがあった。怒りながら照れている男がひとり。そんなのをみたら、またどうでも良くなった。キレイだしな、この男は。キレイなものはそれだけで価値があるんじゃないかと思う。

「いや、箒、サンキュ」
「あ、うん」
「礼は必ずする」
「だから、いらんて。ーーそうだ」
 お菓子の置いてある中から、ガサガサといくつか取り出す。

「あげる」
「…いやがらせか?」
「ばっか。ビターチョコだって。ほら、ピーター君にも」
「え、あ、ありがと」
「さっきのおわび。これで貸し借りなしだからね」
 わたしながら、ふと、思いつく。

「先に行ったあいつらにいっといて。礼はいいから、二度とここにくんなって」
 箒に乗った体を軽く押し出す。

「それとここの場所バラしたら怒るからね?」
 一瞬バランスを崩し、彼等は不安定に飛び立っていった。

 飛び方があんまり下手なので笑ってしまった。さっきのふたりはあんなに安定して飛んでいたのに。あーぁ、空の上で喧嘩してるよ。

「しあわせ?」
 もう一度宙に言葉を放って、横になる。

「たぶんね」
 この平穏が続く限りは。果てのない、世界がある限りは。

 幸せに終わりはない。

あとがき

すいません。壊れ気味です。
燃費の悪い車…自転車みたいなものだと思ってくだされば(何。
故障が多いけど、直すのも簡単、なもんで(笑。
なんとなく逆ハー。なんとなく。
だんだん犬の扱いがひどくなっているような気がする。
(これでも、犬好き主張しますよ!(笑
改訂:2003/03/18