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書名:GS
章名:GS3@桜井兄弟 - I Still..

話名:04. Come home from school


作:ひまうさ
公開日(更新日):2013.2.21
状態:公開
ページ数:1 頁
文字数:1464 文字
四百字詰原稿用紙換算枚数:約 1 枚
デフォルト名:荒川/美咲
1)
下校イベント

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p.1

 別に避けているつもりはなかった。だけど、バイトを初めて以来、私は校内で幼なじみたちの姿を見かけるようになった。

「おはよう」
 当たり前の挨拶をすると、最初は意外そうにしていた二人も当たり前に挨拶を返してくれるようになった。そうすると、なんだ、避けていたのは自分だったのかもなんて笑えてしまう。

 でも、よく考えて見れば、夏休み前までの自分は周囲に溶けこむことに必死で、周りを見る余裕はなかった。そんな状態だから、勉強にもついていけなくなり、赤点にーー。

「バンビ?」
「う、ううん、なんでもないよ、みよさん!」
 授業前の自分の机でうなだれていると、斜め後ろの席のみよさんから声をかけられ、私は慌てて首を振って、笑顔を返した。みよさんは尖すぎるから、色々と気がついている気がしなくもないけど、聞かないでいてくれる優しさに甘えさせてもらっている。つまり、結局のところ、私はみよさんに幼馴染みたちのことを相談したくともできないでいるのだ。

 授業も終わり、帰宅するために昇降口に向かっていると、悩んでいる原因が二人、珍しく揃っている。

(う、うぅ……よし!)
 実際の所避けていたのが無自覚であっても自分なら、この現状を打開できるのも自分だけだろう。だったら、とりあえず声をかけるべきだと結論づけた私は、自然を装って二人に近づいた。

(えっと、「今帰り?」って聞いて、それから一緒に帰ろうって誘ってみようっ!)
(あ、でも、断られたら? 睨まれるのはそこまで怖くないけど、断られるのはちょっとへこむかも……お、女は度胸っ!)
 近づきながら考えていた私は目の前を誰かが横切ろうとした姿に気がついていなかった。

「美咲ちゃんっ」
「え?」
 琉夏君の声に顔を上げた私の前を、男子生徒が走りぬけ、バランスを崩した私は後ろに倒れそうになり。

「わっ」
「……セーフ……」
 温かな誰かの腕の中に、いた。聞こえてくる声は琉夏君だけど、だけども!

「うわ、ごめんっ! じゃない、ありがとう!」
 慌てて離れると、琉夏君が困ったように笑っていた。あ、この顔、覚えがある。今じゃない、ずっと前ーー子供の、頃?

「ぼーっとしてると危ないよ、美咲ちゃん」
 気をつけてね、と私の頭に伸ばされた手が寸前で止まる。どうしたんだろう、と首を傾げていると、離れた場所で琥一君が琉夏君を呼んだ。

「ルカ、行くぞ」
「じゃあね、美咲ちゃん」
 琉夏君が琥一君を追いかけるように離れてゆく。その瞬間、私は無意識に手を伸ばして、琉夏君のシャツを引っ張っていた。驚いたように琉夏君が振り返る。

(い、言わなきゃ。今、今しかないんだからっ)
 予定外だけど、こうして琉夏君から近づいてきてくれるなんてチャンスはもう無い気がした。だから、私は必死に笑顔を作って、それを口にした。

「あ、の、二人とも今帰り? 一緒に帰ってもいいかなっ?」
 これだけじゃ断られる気がした私は必死で言葉を捜す。せっかく再会できたのに、このまますれ違ったままなんてーー。

 少しの間だけど、長い時間が過ぎていくような焦りの中で、琉夏君が先に口を開いた。

「うん、俺はオッケー。コウは?」
「俺もいいぜ」
 行こうと笑顔の琉夏君が差し出してくれる手を見て、その後ろの憮然とした琥一君の顔を見て、一瞬だけ私は二人の小さな姿が見えて、目を瞬かせた。

「美咲ちゃん?」
「う、うん。行こうっ!」
 重ねあわせた手はどちらも暑かったが、おそらくは残暑のせいだけではないだろう。やはり私たちは互いに遠慮していたのだと気がついたのは、こうして一緒に帰る日が増えたおかげだった。

あとがき

初下校デート。
(2013/02/21)