50#よくある囚われの身
あの村の家の壁も村の小さな神殿も石造りだったな、と私はぼんやり思い出していた。色々なことが一気に起こりすぎて、混乱する。
初めは、ただ私の系統を診断してもらうだけの旅だったのに、私は女神の記憶を完全に思い出してしまって。従者であるディが現れて、フィッシャーが刻龍の頭領で、オーサーが私の代わりに大神殿に連れて行かれて。そして、オーブドゥ卿が実は最初の女神の護衛の記憶持ちで、つまりは最初の女神の恋人らしくて。
その上、最初の女神の仇、だと。
「う~っ」
私は寝転がっているベッドの枕に顔を強く押し付けて、意味もなく足をばたつかせる。静かな室内に広がる音は、私がそれをやめると再び静寂を取り戻した。
顎を上げて、目でベッドの上方を見つめる。木目を残す木枠の板の向こう側はすっかりダークレッドの重厚なカーテンで塞がれていて、身体を返してぐるりと視線を動かしても切れ目は一つしかない。
ここが大神殿の奥の一室らしいというのは、言われるよりも先に感じた。ここほど色濃く女神の気配が残る場所など、私は他に一つしか知らない。
それはイネスの地下の遺跡とよく似ていて、同じ空気を肌で感じつつも、同時にぞくりとする薄ら寒さを憶えて、私はむき出しの腕を擦った。
来るまでに着ていた乗馬服は、ラリマーによって、リュドラント王に謁見した時とよく似た真っ白いドレスに着替えさせられた。抵抗しなかったのは、偏に無表情なラリマーの瞳に謝罪の色を見たからだ。彼女はオーブドゥ卿に仕えているから逆らえないといったところだろう。
髪を止める紐もなく、おろされた真っ直ぐな黒髪の一房を自分の左手で握って、軽く引く。髪留めさえも取り上げられ、私としては邪魔なことこの上もない。それに、このままでは戦い辛い。
だが、これ以上戦ってどうなるというのだろう。為す術もなく大神殿まで連れて来られてしまっているし、たとえヨンフェンまで今更戻っても、私にはフィッシャーほどの魔法は使えないし、ディほど身一つで戦えるわけもない。そりゃあ、拳闘士としてそれなりの腕であることは自負しているけれど、本当の戦でそれが役に立てるものかと尋ねられれば、否と答えられる程度に私は自分を知っている。
考えこんでいる自分の手の甲に、ポツリと雫が落ちて、私は慌てて目元をこする。ここに来てから、一眠りしてしまうぐらいの時間は経ってしまっているはずだ。泣いている時間があるなら、私は大神殿にいるはずのオーサーを探して、ここから逃げ出すべきだ。彼ならば、少なくとも村の近くまで帰る札を持っているはずだ。ーーというか、フィッシャーに私の側へと札を強請った話を聞いた時から、たぶん彼は二人で村に帰る札も「ついで」とばかりに強請っていてもおかしくない。私の知る幼なじみのオーサーというのは、そういう少年だ。
村の近く、つまりミゼットまで戻れば、ヨンフェンまではそれほどの距離ではない。少なくともイネスよりは近いし、ヨンフェンはさして大きい町でもない。戦場に戻ったところで何ができるわけでもないにしても、何もできないとしても、せめて戦争を始めた責任を私がとらなければ。
ベッドの上をそっと移動して、囲む分厚いカーテンの隙間から外を伺う。入ってきたときと同じ冷たい石の壁や床、天井をぐるりと見回し、誰もいないのを確かめてから、私はそっとカーテンを抜け出した。
部屋の明かり取りーー窓は壁の上の三分の一もつかって、大きく切り取られたみたいになっている。雨でも降ったら吹き込みそうなその窓に両手をかけて、飛び乗る。窓枠から見た眺めを前に、私は落胆の息を吐いた。
日差しが差し込んでいるのだから、逃げることぐらいできるだろうと思ったのだが、多少の緑はあるものの、その場所は完全なる箱庭だ。上方から差し込む日差しがあると思ったのは、どうやら、石壁に鏡面処理でも施してあるせいらしい。
試しに女神の力ある言葉を唱えてみて、何も起こらないことで、私は確信する。ここは女神の力さえも届かない、魔法力の一切を遮断した場所だ。女神の記憶の欠片にある通りならば、女神を幽閉するための檻ーー。
力任せに寄りかかる窓枠代わりの壁を殴りつける。何度も、何度も拳を叩きつけて、ふと見ると壁に自分の血が滲んでいた。
「っ」
呆然としている間にここへ連れて来られ、幽閉され、すべてを諦めようとしていた自分に、その血の色と痛みでもって、尚更に腹が立つ。女神は誰の命にも従わない。私は、誰にも、私以外の誰にも従わない。女神が従ってしまえば、世界は崩壊してしまうのだ。
「諦めて、たまるかっ」
そうでなくとも私を助けるために何人もの人が犠牲となった。過去も、現在も。未来にまで、続けさせるわけにはいかない。すべてを私が終わらせなければいけないのだ。そのために、この最後の女神の記憶だって、あるのだから。
だんっ、とひときわ強く拳で壁を殴りつけ、私は部屋の内側へと戻る。部屋を改めて見回してもベッドしかない。唯一の出入口である石の扉は私の背の三倍はあり、この世界の人間の描いた女神の彫刻が掘り込まれている。それを見上げ、希う。
「オーサーが見つかりますように」
扉に手をかけると、意外にもそれはすんなりと開いた。力いっぱいに押さなければならないと思っていただけに拍子抜けするが、すぐに気を引き締める。女神の力も魔法も使えないというのならば、まずはオーサーを見つけなければ。札使いの力はこの世界で生まれたもので、この建物内では関係がないはずだ。魔法使いが書いているとしても、それは女神の力に対する強制力を持たない。もちろん、そういう意味ではオーブドゥ卿やラリマーに気をつけなければならないので、足音を忍ばせ、私は滑るように廊下を急いだ。
51#よくある逃亡
廊下に出た一瞬だけでも、頭の中を直接かき混ぜられたみたいに、吐き気が襲ってくる。だが、幸いにも女神としての力が薄れている私には、全力でなくとも軽く走る程度はできる。だが、問題は場所が分からないことと、普段はあるはずの方向感覚というものがまったく効かないことだ。
「…様」
「え?」
どうしようかと思いながら走りだした私だが、最初の角を曲がって直ぐのところで、不意に廊下の途中で横から引き寄せられた。為す術もなく、口を抑えられて壁と壁の隙間に連れ込まれる。大人一人が身体を横にして、やっと通れるぐらいの隙間だが、すぐに二人すれ違えるくらいの通路になっている。秘密というほどではないが、おそらくは神殿内部の者のための通路なのではないだろうか。
「お静かに、私はラリマーです」
私は大きな声を上げて叫びそうになったが、後ろから抱かれるように回される腕や密着する体は確かに女性のもので、囁く声も確かにラリマーだ。だが、ラリマーは主であるオーブドゥ卿に逆らえないはずだ。
「私はアデュラリア様の敵ではありません。どうか落ち着いて、私についてきてください。外まで御案内します」
彼女の声に嘘は見えない。だが、主君に逆らうタイプには見えないだけに、手を離されても私は更に奥へと進むラリマーを素直に追いかけられない。
「お早く」
気が付いたラリマーが、小声で私を急かしてくる。
「でも、あなたはイェフダ様の、」
「ーー本来のイェフダ様は、このようなことをなさるお方ではありません」
闇に沈むラリマーの表情は、私からは伺えない。
「主が誤った行動をなさる時は、正しき道へと戻すのも私の役目なのです。元より、そのように仰せつかっております故、アデュラリア様は直ぐにここからお逃げください」
それが主君の本来の望みだと、ラリマーはそういうけれど、私はそれを素直に信用などできるわけもない。彼女は少し思案したあとで、自らの服の数箇所から紙札を取り出し、整えてから私に渡した。
「私の手持ちの札全てです。今はこれで信用していただけませんか」
札士にとっての武器を渡すのだと、そういわれても困る。
「…いいよ、今は信用しておく」
ラリマーは私がそう言うのはわかっていたと頷き、だが、ぎゅっと私の手に札を握らせた。
「さあ、参りましょう」
今度こそ走り出そうとした彼女を、慌てて私は引き止める。
「ま、待ってっ」
もしも本当にラリマーが味方だとしても、私は彼女を頼ってはいけないことぐらいはわかる。叱責程度ならばともかく、裏切り者として処断されても寝覚めが悪い。それに、過去の経験からして、私が頼れば必ず犠牲は産まれるということを、私は身を持って知っている。
「道を教えてくれるだけでいいよ。後は一人で行く」
私の提案に対し、ラリマーは少し逡巡してから、首を縦に振った。
「道は難しくありません。ただ、ここは貴女に迷いやすくできております」
ラリマーのいうことに、私はわずかに心当たりがあった。
「…女神の感覚を狂わせる、檻、ね」
「はい」
ここについてから感じていた奇妙な不安感と安心感。対極のそれを、私は何代目かの女神或いは眷属の夢として知っている。ただの夢と割り切っていたわけでも楽観していたわけでもない。ただ、それが本当だとしっているだけのことだ。
「抜け方は?」
「まずは最奥へ。王城へと抜ける道がございます」
ルクレシアの王城からは、かつての女神の眷属が城下へ抜けるために使っていた抜け道があるのだという。
「なんでそんな場所にあるの?」
私が問うと、ラリマーはくすりと微笑んだ。
「ディルファウスト王の后が女神の眷属だったという話は知っておられますね? 貴女のように狙われることが多かったので、いざという時にすぐに彼女が逃げられるようにとの配慮だと、伺っております」
別に笑うような箇所はどこにもないと思うので、私が首を傾げると、彼女は素直に応えてくれた。
「ディルファウスト王の后であられたリンカ王妃は、アデュラリア様のようにとても活発な方だったそうです。彼女が城を抜けだしても追いやすいように、あえて抜け道を作ったのだとか」
「そこまでしないと追いかけられなかったわけか。…私みたいな庶民ならともかく、活発すぎでしょ」
「そうですね」
少しばかりの一時を二人で笑い合ってから、私達は目を合わせ、置いてラリマーは丁寧に頭を下げた。
「アデュラリア様に女神の加護がありますように」
「…私が女神なんだけど」
「はい、存じております」
再び小さく微笑んだラリマーの姿が消える前に、私は彼女に言われたままに細めの壁の隙間をすり抜け、いくつかの廊下の角を曲がった。
直ぐに見つけたのは、本当に小さな小さな石の壁に囲まれた庭だ。壁の高さはとても高く、とても出られたものじゃない。神殿と対する壁にはびっしりと蔦が這って、その壁を覆い隠している様子だが、私が手を前にかざすと、不思議とそれが割れた。
「っ?」
生き物のように蠢く蔦は不気味で、思わず私が後退ると、それは元のように壁全体を覆い隠す。
「何、これ……」
もう一度私が蔦の壁に手をかざすと、蔦はざわざわとざわめき、うち一つの新芽をその先端につけた蔦が、私の差し出す手の人差し指にくるりと巻きつき、軽く引く。
(導いてくれるってこと?)
引かれる力に抗わず、私は蔦の中へとゆっくり腕を伸ばしていった。自然と踏み込んだ足の前からも蔦は波のように一斉に引いてゆく。
ざざざざざ、と一種異様な音の後で、私の前に現れたのは、小さな小さな、子供が小さな少女一人がやっと潜り抜けられそうな穴が、開いていた。
これがラリマーの言っていた抜け道だろうと推測しつつ、私はそっとその先へと腕を伸ばした。
「おい、こんなことしていいのか?」
不意に聞こえてきた乱暴な少女の声に、私は目を瞬く。
「大神官殿の許可ならとってありますよ」
続いて聞こえてきた青年の穏やかな声。でも、私の周囲には誰の気配もない。
(まさか、幽霊、とか言うわけ?)
一瞬鳥肌を立て、私は慌てて蔦の向こうへと足を踏み出した。
「ディル、てめ、また買収か……」
「ふふふ、僕とリンカの逢瀬を阻む檻など、砕け散ってしまえばいいのです」
蔦の壁を抜けながら聞いた最後の会話に、私は出てしまってから足を止めた。
(今のって、え?)
振り返って目を瞬かせても、そこにはもう何もない石の壁だけしか見えなくて。首を傾げた私はそのまま暫くの間固まっていたのだった。
記憶違いでなければ、リンカというのはさっきラリマーが言ってたリンカ王妃の名前で、ディルというのはもしかすると稀代の天才魔法使いとされたディルファウスト王のことではないだろうか。
もし先ほどの声が事実だとするならば。
(っ、お、オーサー……っ)
思わず涙目で幼馴染を呼びそうになった私の耳に、小さな足音が届いた。聞き覚えのある足運びに、私は顔を上げて、足音の方向に注意を向けた。
52#よくある感情
私の向いている方向は石の壁に覆われた通路のようだ。少しカーブを描いたこの通路の向こうからは聞き慣れた幼馴染の足音が小さく響いてくる。だが、一人ではないようだ。
「ついてこなくても、一人で戻れますよ?」
「別にいいじゃないの。どーせ、戻る場所は一緒なんだしー」
小さく聞こえてきたオーサーの変わりない声に安堵しつつ、私はもうひとつのハスキーな女性の声に眉根を寄せる。だが、今はそんなことをしている場合ではないだろう。せっかくタイミングよくオーサーが通りかかってくれるというのなら、この機を逃す手はない。
私は周囲を見回し、左の壁伝いにある小さな通用口へと身を滑り込ませた。その間にも足音は近づいてくる。
あと少し、と気配を消して構えていたが、その気配は何故かこちらへと真っ直ぐに向かってくるようだ。
(どうしよう……っ)
慌てて辺りを見回しても、この小さな空間ーー二十メートル四方の立方体みたいな簡素な空間には隠れる場所がない。だったら、と出入口の側近くで壁に張り付いて身構える。これはもう、入ってきた瞬間に、オーサーの近くにいる人を殴打して、彼をダッシュするしかない。
機会は一回だけだ。
「別に監視されなくても、逃げやしませんよ。ていうか、ナルから逃げられるとは思ってません」
「もー、監視って何よ、監視って。アタシはただ単にオーちゃんで遊びたいだけよ?」
「なお悪いです」
苦笑交じりのオーサーの声音に、ほんの少しだけ切なくなる。オーサーがこんな風に気を許すなんて、めったにないことだ。少なくとも、私と居るときに、私以外とここまで気を許すようなことなんてなかった。
自分がオーサーの枷となってしまっている気はしていた。私がいつもオーサーを振り回していて、もしかしてそれが不満なんじゃないかとか、思わないことはなかった。
でも、オーサーは私が何をしてくれても許してくれて、そして、いつも共にいてくれて。だからこそ、私はオーサーにーー依存、していたのかもしれない。もしかしたら、私はオーサーを迎えに来るべきではなかったのかもしれない。
そんなことが頭を過っていたせいで、私は反応が遅れてしまったのだろう。気がついた時には目の前でオーサーが目を見開いていて。
「え、あ、アディ? いつ……」
私は混乱しているオーサーの口を両手で塞ぎ、顔をそむけた。
オーサーは女装ではなくて、貴族の子息みたいな立派な服を着ていたけれど、私はそれを直視するほどの余裕もなかった。隣に立つ女性は、胸こそあまりないとはいえ、長身に見合った、ごくシンプルな一枚布の神官服着ているだけなのに、その耳元で切りそろえられた輝くような銀の髪も、透けるように白く滑らかな肌も、全てが作り物みたいに完璧で完成された一つの美のように美しい人だ。
「迎えに、来たんだけど、必要なかった?」
自分でも思っても見ないほど、低い声が喉から出てきて。でも、驚くほどに舌がなめらかに動く。
「オーサーは、その人といるほうが楽しい? 私より、大切、なの?」
オーサーが誰といようと、誰を選ぼうと、私には関係ないと思ってた。それなのに、心の内側から溢れてくる、昏く淀んだ感情はなんなのだろう。
どうして、こんなに胸が苦しいんだろう。
「アディ……?」
「あら、この子が?」
オーサーの斜め後ろにいた長身の女性が、私の顔を覗きこんでくる。横長の怜悧な瞳にバランスの良い少し高めの鼻梁が映え、薄い唇は熟れた桃のように瑞々しく美しい光を放っている。動きも優雅で、洗練されていて、思わず見とれてしまいそうだ。
「はじめまして、アデュラリアちゃん。お会いできて嬉しいわー」
にっこりと目を細めて微笑む女性に、私は何の返事もできないでいた。
「ナル」
そんな私と女性の間に、オーサーが不機嫌そうに割り込む。
「アディに近づかないでください」
「あら、ご挨拶しただけじゃなぁい」
「近づかないでください。で、アディ、迎えって? ディやフィッシャー様たちもいるの?」
女性から隠すように私をかばっているオーサーの様子に、私も泣きたくなる。合わせたくないぐらい、その人が大切なのだろうか。私と居る時間のほうがずっと長いのに、そんなにも、その人が。
「いないよ」
「え、じゃあ、アディ一人で来たわけ? 何してんだ、あの人達……」
「ディは悪くない。だって、私はイェフダ様に無理矢理連れて来られちゃったんだもの」
「イェフダ様に?」
こんなことをしている場合じゃないのに、私はもうオーサーを直視できなくて。でも、離れられなくて、オーサーの背中をゆるく掴んで、頭を預けた。
きっと今頃ディはひどく後悔しているだろう。ただでさえ、過去を思いだして不安定になっていたようなのに、フィッシャー達に丸め込まれて、戦場へ向かっていたはずなのだ。そして、まんまと一人になった私はイェフダ様に攫われてしまって。
「私、誰も、巻き込みたくないって、思ってたのに。なのに、結局、ディもオーサーも巻き込んで、その上ーー」
自分を見てくれないからって、こんな風に拗ねて。子供みたいだ。
「……最っ低ー……っ」
苦笑が私の不意をついて零れた。
「アディ?」
気遣わしげな幼馴染の声をその背中に接して聞きながら、私はひとつ深い息を吐きだして、彼から離れた。
「オーサー……オーソクレーズ・バルベ―リ、貴方はもう自由だ。これ以上、私に縛られることはない」
振り返ったオーサーの顔はひどく慌てていた。
「ちょ、ちょっと待って、アディ、何言ってるの!?」
だけど、私はオーサーから一歩下がって、微笑んだ。
「今までありがとう、オーサー」
そして、伸ばされるオーサーの腕が自分に触れる前に、私は彼の隣を走りぬけ、元来た通路へと戻ってしまったのだった。
53#よくある誘い
オーサーから逃げて直ぐ、私はあの不思議な通路へと身を隠すつもりだった。でも、思うようにならぬのが、世の理のようだ。
私が向かう通路の先、先ほどオーサーらが来た方向から、石畳の床で靴音を高く鳴らし、ゆったりとした足取りで歩いてくる男がいるのをみて、私は足を止めた。さっきの場所から十歩も離れていない距離だし、タイミングとしては一番最悪だろう。今は多分呆然としているとしても、我に返ったオーサーに捕まる訳にはいかないというのに。
だいたい、あんな感情を、幼馴染にどうやって説明したらいいのかわからないし。そもそも、まだ自分自身落ち着いていないのだ。今はとにかくオーサーから逃げるしかない。
「アデュラリア様、どちらへ行かれるのですか?」
「イェフダ様」
先ほどの余韻で震える私の声に、彼はどこか残念そうに微笑む。足取りの止まらない彼に対して、腰を落として、構えてしまう私との距離は縮まるばかりなのだけど。私は一歩も動けずにいた。
ラリマーは、これはイェフダ様の本位ではないのだと言っていた。ここから導き出される結論を証明するためには、何かが必要なはずだ。物でも、印でも。そうでなければ、ならないはずだ。
ーーこの世界の女神が、そう定めたのだから。
そこまで考えて、私は自分の考えついた答えに気が付き、ぞくりと肌が泡立つのを感じた。もしも、これが彼女たちの意思というのなら、私に逆らう理由はない。だが、そうでないのだとしたら。
「すぐに帰ってくるよ」
村を出る前に、そうマリベルに言ったのは私だ。彼女が私を見つけ、救ってくれた。彼女だけは、悲しませたくはなかったのだけど。既に女神の宣言までしてしまった以上、帰ることは叶わないだろう。
「アディ!」
背中にぶつかるオーサーの声音に、私はビクリと身を震わせる。考えている時間はないようだし、こうなったら直接聞くまでだ。
「貴方が何者でもいい。私を、私だけをここへ連れてきた目的は何?」
私の問いかけに、オーブドゥ卿は口元に弧を描く。彼の細長い指がゆっくりと上を指し。
「門を開いて欲しいのです」
天の門というものがあるのだと聞いたのは、それほど遠い過去でもない。ほんの数日の間のことだ。だから、私も直ぐに思い辺り、眉根を寄せた。
女神とそれに連なるもの、或いは歴代の大神官でも片手に余るほどしか開けなかった、女神の世界とこの世界を繋ぐ門を開けと、オーブドゥ卿は言っているのだ。
「できない。私は方法を知らないもの」
今まで夢で見た転生女神の記憶の中にも、そんなものは欠片もなかった。だから、これは本当のことだ。だが、彼は首を振って微笑む。
「ご心配には及びません。貴方はそこにいてくださるだけでいい。さあ、参りましょう」
腰をかがめ、差し出されたオーブドゥ卿の手を前に躊躇したが、すぐに近づいてきたオーサーの声に、私は決意を固める。
「……本当にそれだけでいいのなら」
「アディ!」
そうして、オーブドゥ卿の手を取り、振り返った私が最後に見たのは、必死に私に追いすがってくる幼馴染の姿だった。
何しろ、直ぐ後で私の目の前の景色は一変してしまったのだから。
「……今度はどこよ」
「心配せずとも、王城内ですよ?」
オーブドゥ卿に手を取られたまま私が見回すことができた場所は、小さな部屋だった。広さは大広間というほどではないが、大人が十人ぐらいは余裕で寝転がることができるぐらいある。そして、大人でも見上げることが困難が場所に、小さな人の頭程度の窓が等間隔に並んでいる。その小さな窓にガラスがある様子もないし、外から入ってくる明かりは完全なる陽光だ。その光で室内を見渡しても、何一つものがない。
(まるで、牢獄だ)
出入口はどこにもない。まあ、その辺は魔法でここまで運ばれたのだから、気にしても仕方がない。きっと、特定の魔法か何かがあるのだろう。魔法を使えない私にわかるわけもない。
(いやまて。そもそも魔法でしか来られない場所に、どうして連れて来られたの?)
ぞくりと肌を泡立てた私が振り返った時、背後で鈍い光が一閃した。
54#よくある急転
目の端に鈍い光を認めた瞬間、私はとっさに前方へと受け身をとった。だが、背中にはまだ過日の傷口があり、わずかな痛みに顔を顰めてしまう。
「イェフダ様、何を」
問いかける間もなく、再び剣を振り下ろしてくるオーブドゥ卿の一撃を避けるが、私は戸惑うばかりで反撃できない。
彼はただの札士であったはずだが、貴族の嗜みとして一応の剣技を修めているのかもしれない。もちろん、剣術を学んだことのない私には予測しかつかないが、少なくとも村の大人たちよりは劣る剣技に負けるつもりはない。
だが、怪我を負わせようとは思えなかった。ラリマーの言もあるが、わずかでも共に旅をし、多少なりとも私の知るオーブドゥ卿ならば、こんな手段に出ることはないと思った。
「流石はあの御方の魂の持ち主だけありますね」
よくわからないことを言うオーブドゥ卿だったけど、一度目を閉じて、再び開いた時には雰囲気が変わっていた。
オーブドゥ卿はどちらかと言うと柔和で穏やかと言われる人だ。女神が関わると子供みたいな反応をするし、貴族らしさを隠しもしない。そういう人だけど、最初から妙に私に構う人だけど、それだけだった。
でも、今は違う。この空気は、夢の中のあれと同じ。最初のアデュラリアを殺した、あの男と、同じ。
「っ!」
思わず後方へと飛び退り、距離をとった私の位置を剣先がかすめる。
「イェフダ様っ!」
私の呼ぶ声に、一瞬だけ彼の眼の色が揺らめく。反応はあるけど、もしかして、これって中身を乗っ取られかけてる、とかだろうか。
(どうしろっていうのっ)
元のオーブドゥ卿にだったら、気絶してもらう手もあったかもしれない。でも、今はどうやら、あの最初のアデュラリアの側近だったフィスが中身のようで。今の私には彼の剣を避けるだけで精一杯の状況だ。彼女の側近であった彼は、近衛騎士としての役目もになっていたのだから。
「観念してください」
「するか、馬鹿!」
私が言い返した僅かな隙をついて、彼が接近してくる。それが、予想を上回る早さだったからか、それとも一瞬だけ見えた彼の辛そうな顔が、過去のあの時と重なったせいか。
ーー気がついた時には、目の前に彼がいて。
「アデュラリア様、貴女でなけれが、彼女に会えないのですよ」
彼の手元が翻り、横薙ぎに剣が振られるのを見ても、私は反応できなくて。やられる、と覚悟した瞬間、私は後方に身体を引っ張られていた。
高い金属音を立ててオーブドゥ卿の剣が弾かれて、見慣れた薄汚れた灰白色の大きなマントが私の目の前を翻る。目線を少し上げれば、暗緑色の短い髪と憤りに燃える緑の葉の色をした明るい瞳が見える。
「何してやがる、イェフダ!」
苛立ちを抑えきれないディの声が、聞こえて。私を背中から抱きとめる腕も耳元で安堵する声も、ひどく懐かしく優しいオーサーの声で。
「……間に、あった……っ」
反応することもできないままの私の耳に、苦笑が届く。
「間に合ってよかった。ここで儀式が成功していたら、私もディに殺されるところでしたね」
「笑い事ではないよ、フィス」
「本当にそうよっ! 少しは反省したらどうなの!?」
すっかり聞き覚えたフィッシャーの声と、先ほどのオーサーと話していた女性の声。それと、どこか聞き覚えのあるのんびりとして青年の声。
何が起こっていのだろうと、考えもまとまらないうちに、目の前でディがオーブドゥ卿を叩き伏せたのをみて、私は慌てて立ち上がる。
「ディ、待って!」
小走りにディへ近づこうとすると、いつの間にか側にいたラリマーに腕を取られる。
「アデュラリア様」
「イェフダ様のどこかに印があるはずなの。それを外せば、元のイェフダ様に戻るはずだわ。ラリマー、最近新しく遺跡で見つけたものって何かない?」
私が問いかけると、ラリマーは少し考え込んだ後で、自分の主の元へと近づいた。何か心あたりがあるのだろう。
「ラリマー……?」
驚いた様子のオーブドゥ卿をじっと見つめていたラリマーは、全く自然な動作で主の胸元へ手を突っ込んだ。
それに驚いたのは私だけではないらしく、周囲から息を呑む音が重なり、聞こえた。
「失礼致します」
ラリマーの手元で光が煌めいたのを見た一瞬後で、イェフダ様ががくりと肩を落とすのが見えた。ラリマーの手元には一つのペンダントがあるようだ。
「アデュラリア様」
差し出されたペンダントには、漆黒の宝石が嵌められているようだ。表面はなだらかに整えられていて、一見すれば黒曜石にも見える。
私はそれを手に取り、小さく声をかけた。
「……貴方の知るアデュラリアはもういない。女神はもう、この世界に帰れないよ」
周囲がそれを訊いて、戸惑うどころか、固まってしまっていることに気づきもしなかった。
「天の意志は、女神がどれだけいようと変えられはしない。過ぎた時が戻らぬように、とっくに女神の時代は過ぎて、この世界は残されたヒトの手のものとなっているの。だから、貴方がどれだけ求めても、彼女たちは帰らない」
そうして、私が石に語りかけるのは、女神として知っている全ての真実。決して覆ることのない、真実。
「貴方がどれほどに彼女たちに焦がれようと、決して同じ時間は戻らないよ」
普通の石であれ、魔石であれ、反応を持たない言葉だけのはずだ。だが、少しの沈黙の後で、それは急に魔力を張らみ、内側から爆発するように砕け飛んだ。
55#よくある決着
弾けた欠片の幾つかは私の顔を少しばかりかすったが、致命傷というほどのものはなかった。ただ、その後の現象は不思議なものではあったが。
黒い欠片がゆっくりと私の周りに降り注ぐ中に、今まで夢で見ていた光景のいくつかがあって、それらはどんどんと時代を遡っていく。
大体の夢は「女神の眷属」に間違われ、粗雑に扱われるか、閉じ込められるかというものばかりだ。それらを眉をひそめてやり過ごしてゆくと、あの場面にたどり着く。
最初の女神が殺された、あの時だ。
思わず私が手を伸ばして欠片に触れると、周囲の景色が一変した。
命を止めてしまった女神の躯をそっと抱き上げる男の側で、私はそれをじっと見つめる。この先は知らないことだったから、純粋にどうするのか興味があった。それと、あの悲しい瞳で彼が彼女を殺した理由を知りたかったから。
「何故、殺したの?」
驚いたように目を見開いた男は、彼女をしっかりと抱いたまま、私から距離を置いた。
「お前……いつから……」
「ねえ、どうして殺したの? 邪魔だった? 愛しているといったのは、嘘だった?」
「っ」
「彼女は、ずっと貴女を信じていたのに」
「……本当にそうだろうか……」
不意に、泣きそうな男の声が聞こえて、私は口を閉じた。
「アデュラリア様は強い御方だ。私に守れなくとも己の身を守ることができるし、私の手など必要とされていなかった。アデュラリア様の望みは、私には手の届かないものだ」
彼が何を持って、彼女の望みを思っているのか、それが裏切りの理由だろうか。
「私ではアデュラリア様に何一つお役に立てない」
「だから、殺した?」
「殺したかったわけではない。ただ、望む場所へとお返ししたかったのだ。人の世に染まってしまった後では遅い」
「今のうちならば、天へ送ることができると思ったのだ……」
そんなことは無理だ。命潰えても、既に魂は世界の枠に組み込まれてしまっている。手違いか、あるいは気まぐれでもなければ、もう女神は天へ帰ることはできない。
「おまえは、女神を迎えに来たものではないのか?」
その問に私は苦笑する。こうして会話出来ているのは不思議だが、少なくとも過去の事象に自分が介入できないことぐらいはわかる。起きてしまっている事実が覆ることがあってはならないのだから。
「これから、彼女は幾度も世界を巡ることになる。その中で貴女の記憶が消えることは決してないよ。ーー何故かわかる?」
男の瞳が、私を捉える。既にそこに表情がないことを見て取って、私は溜息をつきたくなった。
「……答えは、自分で考えて」
その言葉の後で、場面はすぐに切り替わった。私を覗きこんでいるのは、オーサーとディとそれから知らない顔が二つある。
「アディ!」
一番に泣きそうな声をかけてきたのはオーサーだった。
「……ここ……」
「王城の塔の最上階だよ。移動してない」
確かに見回しても周囲の景色が変わった様子はない。
私が起き上がると、大きな手が私を支えてくれる。ディを見上げると、気遣わしげに瞳を戸惑いに揺らしている。
「石は、どうなった?」
「砕け散って、欠片もないよ」
答えたのはオーサーでもディでもなく、第三者の声だ。どこかで訊いたような気もするが、見覚えがない。
「……欠片……」
そういえば、さっきのやりとりは余りに不自然だ。過去の事象に介入できないはずなのに、彼と私は会話をした。その結果が、もし私が思うとおりなら。
「……フィッシャー」
「なんですか?」
オーブドゥ卿の側にいたフィッシャーが私を振り返る。
「貴方じゃない。欠片になっても聞こえているのでしょう? あの時の答えを教えるわ」
「彼女は、アデュラリアを人の世にとどめたのは貴方よ。貴方と同じ人になりたいと願ったから、女神は進んで世界の輪に組み込まれたの」
「願いは最初から口にしていたはずよ。信じてもらえたら、結末はきっと違ったものになったでしょう」
「……フィッシャー、女神アデュラリアは、本当に貴方を愛していた。仲間と二度と会うことがかなわなくてもいいと思ってしまうぐらいに」
そうでしょう、と問いかける前に魔法陣が一瞬淡く光り、次いで私を包んだ。それから、私の胸元まで収束し、拳大の光の球となる。
「あ」
小さく声を上げたのは、ラリマーだ。彼女にはこれがなんなのか、もしかしてわかったのかもしれない。それも、彼女の正体が私の思うとおりだとすれば、無理からぬ事だろう。
小さな光の玉に寄り添うように明滅を繰り返す黒い玉が現れ、寄り添う。その二つは、ゆっくりと天井へと浮かび上がって、そして窓から差し込む光に溶けるように消えた。
そして、それを見つめていた私は、自然と口角を上げて微笑んでいる自分の目元を流れ落ちる雫を感じ、静かに目を閉じたのだった。
56#よくいる眷属
黙って私を見守っていたオーサーが、震える声をかけてくるのを、私はぼんやりと聞いていた。
「……アディ、な、なんで……」
続く言葉の意味は、聞かなくてもわかった。だって、段々と自分の身体が透き通っていくのが見えるから。自分の手を目の前に翳すと、泣きそうに顔を歪める幼馴染の顔が見える。
「なんで、透けてるのっ?」
泣きそうに騒がなくてもわかってるよ、オーサー。
「オーサーには前に話したことがあるよね。女神の眷属っていうのは、女神の容れ物の名前だって。そこに本当の意味での女神の魂が宿ると、女神の眷属から、女神の末裔に出世するわけだ。じゃあ、その容れ物から女神の魂が、力がなくなるとどうなる?」
誰も答えない様子に、私は小さく笑う。
「女神の容れ物としての役目を果たした身体は、世界に溶けて消える。そうしないと、この世界が壊れてしまうからね」
もうひとつの残った女神の役目など、誰も知らない。だから、私は語る。
「さっき、アデュラリアの魂がフィッシャーを送って逝ったから、もう私の仕事はお終い」
だから消えて当然なのだと笑ったつもりだったのだけど。
「アディ、何言ってんだよ。母さんたちと約束したんだろっ。一緒に、村に帰るんだろっ!?」
そういえば、そういう話だったな、と笑ったつもりだったのだけど。
「一緒に、帰ろう、アディ」
抱きついてきたオーサーが泣いて引き止めてきて。でも、こればかりは自分でもどうしようもない。
本当は帰りたい。でも、どうしようもないことだからと、諦めていたのだけど。
「ーーアデュラリア様は、この世界に未練があるのですね?」
不意に静かな声が乱入し、私の手をとった。それは、さきほどまで、ラリマーと名乗っていた女性で。私の手をとって直ぐ、両目を閉じ、祈りを捧げ始める。
ーー我、女神の眷属の一欠として願い奉る
ーー女神アデュラリア様の魂を受けし器に
ーー今一度の助力を女神ユスティティア様に希う
それから、ラリマーの身体も一緒に発光して、慌てているフィッシャーを他所に、それは次第に収まった。
「あ、れ?」
私の身体はもう透けていなかった。代わりに、ラリマーが傍らで倒れてしまう。呼吸はしているので大丈夫そうだけど、自分でも何が起きたのかわけがわからない。
「アディ……?」
心配そうなオーサーの頭を撫でつつ、ディに軽く笑ってみせる。
「なんか、ラリマーが交渉してくれたみたい」
「交渉?」
「うん、たぶん、だけど」
自信なさげに呟きながら、私は抱きついてきたオーサーを抱き返して、子供の頃のように背中を宥めるように叩く。
「ラリマーが、眷属……?」
呆然と呟いているのは珍しくフィッシャーだ。というか、この人がここまで驚いた顔をしているのは初めて見た。
でも、以前からよく知っている知り合いの部下が、実は女神の眷属だったとか、かなりの衝撃だろうなと思い当たる。
「こんなに近くに手がかりがあったのに、気付かなかったなんて」
「手がかり?」
なんだとディを見ると、彼からは苦笑とともに、頭を撫でられた。
「フィッシャーは、かのディルファウスト王の魂の持ち主らしい」
「え!?」
「最愛の女を求めて、無理矢理に転生したんだと」
この世界で意識ありでの転生は女神と眷属にしかもたらされないものだ。それは女神が作った理のひとつで、変えることの出来ないものであるはずなのだが。
「人の身で、女神の誓約を破る魔術を創りだしたってこと?」
話に聞いたことはあるが、ディルファウスト王というのは本当に規格外の化け物だったらしい。
「えーと、最愛のって、もしかして、リンカ王妃?」
「しかいねぇだろ」
だよねぇ、と私も空笑いする。しかし、そろそろ疲れた。部屋の中には、オーブドゥ卿とラリマーが倒れてて、オーサーとディはいるけど、他に知らない人間が二人もいる。
「ファラ~、いるなら出てきて」
前髪をふわりと持ち上げる心地よい風に目を閉じ、次に開けた時には目の前に見たこともない青年がいた。
透けるような薄水色の髪が風もないのに揺れている。肌はどこもかしこも透けていて、おまけに大きな目は驚くほどに澄んだ水色だ。だけど、どこか既視感のある気配に、容姿。
「……リーダー……? ……ファラ……?」
彼の顔が目の前にあるのは、現れると同時に彼の腕の中に私が抱き込まれていたからだ。
「無茶、しないでといったはずです。アディ、貴女は僕の唯一の主なのですよ?」
その答えを聞いて、私は安心して微笑んだ。
「ファラ、成長おめでとう。後のこと頼める?」
私の言葉に彼は眉間に皺を寄せながらも頷いてくれた。
「貴女がそれを望むなら」
「ん、ありがと」
そうして、私はファラの手の内でくるりと丸まるようにして、眠りについた。
話休題三三、よくある神殿
前回感想を下さった緋桜さん、寝逃げさん、ILMAさん、慧さん、 それから、楽しみに読んでくださる方々も有難うです♪
ここまできてあれですが、ナル様には秘密がいっぱいです~ 次回にアディが語ってくれると思いますので、お待ちください。
次回は、
【三四、よくいる護衛】
久々のオーサーの出番ですが、問題山積み。どーしよう~
感想・批評・酷評大歓迎です♪ ここまで読んでくださり、有難うでした~
331 2009-06-09 18:31
332 2009-06-09 18:39
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338 2009-06-09 19:06
339 2009-06-09 19:23
340 2009-06-09 19:29
村での話をもう少し続けても良かったのですが…終わらせることを優先することにしました。
単に、書くのを諦めたともいいますが(笑
このままあとは終幕まで書いていく予定です。
あと一話で貯めてたあらすじが尽きるんで、更に亀更新になるかもですが、見捨てないで待っていてくれたら嬉しいです。
(2013/11/12)
〆をちょっと変更。
おばけとか怖いとか、らしくないですか?
(2013/11/19)
アディ、逃亡。
色々と耐え切れなくなると逃亡するのは、リンカと変わらない(笑
(2013/11/20)
終わりが、やっと見えてきた……!
次回、多分流血表現入ります。
一応誰も死なないようにする予定ですが、筆頭のヒロインが一番死にそうですよね。
(2013/11/21)
色々とすっとばしています。
だって、終わらせたいから(おい
(2013/11/29)
次で終幕。
(2013/11/30)