初夏の風が小さな渦を足元で作っている中、柊くんは私の手を取った。
「姫、お手をどうぞ?」
そう言って微笑む柊くんは格好良くて、どきどきする。
学校での柊くんは、劇団はばたきの座長の時とは違って、普通の男の子になる。
役ではなく、普通の。そうすると、彼はとてもおちゃめで可愛い人なのだ。
「えっと、その…」
「ふふっ、美奈子さん。赤くなって、可愛らしいですね」
絶対面白がっているってわかっているのに、私は視線を外せない。
だって、この笑顔を見たら、視線をそらすなんてできるわけない。
学校でしか見られない柊くんの顔。
「…ずっと、こうしてあなたを見ていたいな…」
小さく零された声がまるで心を読まれた気がして、目を見開いた。
「っ、もう、からかわないで!」
「ふふっ」
素の柊くんの笑顔を皆に教えてあげたいと思っていたのに、今はそうしたくない。
私だけに向けてほしいなんて、おかしいな。
(柊視点)
僕があなたをからかっていると美奈子さんは言うけれど、そんなことはない。
僕はいつでもあなたの視線を独り占めしたくて、必死なんです。
それをあなたに見せないのは、僕が役者で、ただの男だから。
美奈子さん、どうか僕に見惚れて、虜になって。
ついったーで見かけた柊くんに触発されたので。
衝動的に、公開。
許可取得済み。
ありがとうございます。
https:twitter.com/r_t_s_y_/status/1511668001786916868
2022.4.8