ハリポタ(親世代)>> 読み切り>> 親世代@ジェームズ - Dear Autumn

書名:ハリポタ(親世代)
章名:読み切り

話名:親世代@ジェームズ - Dear Autumn


作:ひまうさ
公開日(更新日):2003.11.3
状態:公開
ページ数:1 頁
文字数:1141 文字
四百字詰原稿用紙換算枚数:約 1 枚

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p.1

 季節に宿る妖精がいるのだとしたら、彼女はまさしくソレだ。春に芽吹き、夏を楽しみ、秋には迫り来る静寂にただ、微笑む。

 今は秋。

 中庭の吹きさらしのベンチに座り、彼女は本を読む。

「やあ、今日も読書の秋?」
 どんなに側まで近づいても、声をかけるまで決して気がつかないぐらいの集中力は、この時期しか起きない。

「こんにちは、ジェームズ君」
 弱々しい微笑みだけれど、どこか暖かい温度を持っている。

 隣に座ると、ほんの少し身じろぎして間を空ける。いつもある不思議な境界線から、僕は踏み込めない。

「何の本?」
「星図の本よ」
「あぁ、今日は流星群が落ちてくるってことか」
「今日じゃないけど、近いうちにきっと」
 首を傾げて笑うのは、彼女にとって意識したことじゃない。さらりと肩から髪が落ち、揺れる。

「それで急に星の本を?」
「そうって言っても信じる?」
「いいや」
「でしょ?」
 夏の時とはまた違った輝きを放つ彼女は、季節に宿る妖精みたいだ。

「じゃ、なんで?」
「明日テストがあるんですって」
「…本当?」
「うそ」
 この世界で僕をこんな風にからかうのは君ぐらいのものだよ。

「本当のところは何なんだい?」
 それを心地好いと思えるのも事実。

「まさかシリウスを探してるとか言わないよね」
「あら、それも面白そうね。次は探してみることにしようかしら」
「待った待った。冗談だよ。シリウスなんて探さないでよ」
「何慌ててるの?」
 冗談じゃない。彼女に他のやつに興味なんて持ってほしくないんだ。つまらない幼稚な独占欲だと、君は笑うかもしれない。それでも。

「星図占いって知ってる?」
「星占い?」
「いいえ、星図占い」
 読みかけの本をなぞる手を追う。小さな手は骨ばって、簡単に砕けてしまいそうだ。

「それによると、貴方達は管理人さんから逃げてる最中じゃなくって?」
「大正解。よくわかったね」
「こんな場所でのんびりしていて良いの?」
「実は非常に良くない」
 そろそろここも勘付かれるだろうと、腰を浮かせる。

「もう一緒に悪戯やらないのかい?」
「ハロウィンになら、のってあげてもいいわ」
「もう過ぎたじゃないか」
 そうね、と笑う。今目の前で消えても不思議じゃない顔で。

「今度のクリスマスはどうするの?」
「星を見に行こうと思ってるわ」
「僕も一緒に行っていいかな」
 一瞬、姿が揺らいだような気がして伸ばした手は、先ほどまでと同じ笑顔に阻まれる。クリスマスの前の月の氷結みたいな、冷たい笑顔は彼女の周囲に完全に幕をかける。

 沈黙が支配する空間を統べているのは、彼女だ。僕には何の力もない。

「いいわよ」
 それが秋が冬に代わる時の合図のように。季節に呼応するように。彼女もまた、静謐を身に留めてゆく。

 秋は深まる毎に静寂を増し、ただ冷たく固くなってゆく。

あとがき

ごめんなさいごめんなさいごめんなさ(省略)ジェームズファンの方々、ごめんなさい(平謝り
悲恋じゃありません。決して。暗いだけです<それもどうか。
冬篇も書くには書いたのですが、気にいらなかったので消しちまいました。
そんなわけで、無駄に複線のある秋の夢。しかも短い上にmドリームじゃな(殴。
(2003/11/03)