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書名:テニプリ
章名:読み切り

話名:立海中@幸村 - Wait Time


作:ひまうさ
公開日(更新日):2006.3.13
状態:公開
ページ数:1 頁
文字数:893 文字
四百字詰原稿用紙換算枚数:約 1 枚
もしもの話

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p.1

 右の手元で遊ぶボールの音は、一定のリズムを狂わせることもないというのに、やっている人物は左手で文庫本を開いている。その左手側には、他にジュースが置いてあったり、テニスラケットが置いてあったりだ。

 木漏れ日差す木の下のそんな光景を見ることに飽きるものはない。当の本人は気がついてもいないのだろうが。

「やあ、待たせたね」
「遅いよ、ユキ」
 やや不機嫌な彼女の言葉に苦笑が零れる。君に見とれていたなんて言ったら、直ぐさま手元のボールが飛んできそうだ。

 文庫本を閉じて、こちらを見上げる大きな瞳は不満をありありと示している。かなりご機嫌斜めになってしまっているというのは、言うまでもない。

「結果はどうなの?」
「うん、良好だって」
「そりゃ良かった」
 言う割にあまり嬉しそうじゃない彼女の顔を覗きこむ。

「僕が来るまでの間に何かあった?」
「あったわよっ」
 バシッとボールを地面に叩きつけ、話始める。それが終わる頃にはきっと暗くなってしまうだろうから。

「ねぇ、その話はどこか喫茶店に入ってからにしよう」
 ここにいると、可愛い貴女をまた誰かが好きになってしまうから。

「うん! あ、駅前に美味しいケーキショップがあって、中で食べられるよ。行こう!!」
 立ちあがる勢いがつきすぎて、倒れ込んでくる柔らかな体を抱き留める。あ、ちょっとこのままでもいいかもしれない。貴女のいつもの匂いが、優しく僕を包み込んでゆく。さっきまで無味無臭無菌の病院にいたせいか、より濃く心に染みこんでゆくようで、癒されてゆくようで、とても心地良い。

「ご、ごめんっ」
 慌てて離れようとするのを抱きしめる。

「ねぇ、心配しなくても僕はもう大丈夫だよ」
「でも…」
 不安そうな顔を覗きこむ。大きな潤み始めている瞳に、僕はどんな風に映っているのかな。少しでも、男として意識していてくれたらというのは淡い期待。

 いや、もっと意識してくれたって良いはずだ。

「…ぅん!?」
 頬を包み込んでついばむように何度も口づける。

「な、ちょ、ゆ、ユキ~っ」
 狼狽える彼女は、それでも拒むことはなくて。

「好きだよ」
 僕の言葉に朱に染めた顔をこくりと揺らした。

あとがき

御礼と言うよりも、リクエストの練習です。
そのうち「B-girl」でも出す(予定)の立海部長、幸村です。
(あ、あぶな。危うく「様」とか書く所だった…)
まだまだニセモノですね。精進します。
(2006/03/13)