箒乗りの授業は苦手だ。だって、私は高いところが怖いのだ。
吊り橋だって渡れない。屋上なんて絶対行けない。そんな私が箒に乗って飛び回るなんて。
「絶対無理!」
差し出された手を前に叫ぶと、シリウスはとても楽しそうに笑い返してきた。
「んなに緊張することじゃねぇだろ。何も一人で乗るわけじゃねぇんだ」
苦手な私は三年になった今でも箒に乗れなくて。補習が待ってる私を手伝ってくれると申し出てくれたけど。悪いけど、本気で乗りたくない。
「一人だろうが二人だろうが怖いものは怖いのよーっ」
いくら自分が操るワケじゃないとわかっていても怖いことに変わりはない。
そう言ったら、怒って腕を引っ張られた。
「おい、クィディッチ選手の俺様の腕が信用できないってのか?」
そりゃ、信用してますよ。信用してるけど、怖いものは怖いんだって。
「怖いなら、目ぇつぶってろ」
「それもっと怖い…っ」
「飛ぶぞ」
「いやーっ」
足が地を離れ、宙に浮かぶ感覚に。必死でシリウスにしがみつく。
「やだー! 降ろせーっ!!」
「ヤダ」
楽しそうな声に思うことはひとつだ。
「シリウスのバカーっ」
高所恐怖症を治す方法なんて、あるんでしょうか。とりあえず、私はやっぱり地に足が付いている方がいいです。