柔らかな五月の新緑の風が吹く。緑の香りを乗せて、やってくる。
「てやっ」
ぱこんととても軽い音をたて、へろへろとボールが飛ぶ。そのままネットに当たってこちらに落ちる。
「そうじゃないって」
「言ったとおりにやってるじゃんっ なんで飛ばないのー!?」
力無く笑う幼馴染みに、そのままテニスボールを投げつけると、簡単に捕られてしまった。…悔しい。
「鉄、ボールがあっちに入ったら、逃げないで話聞いてね」
「別に入らなくても聞いてあげるよ」
「それじゃ、私が嫌なのっ」
もう一度ボールを放り投げる。これが入ったら、幼馴染みは卒業する。
「てやっ」
ぱこん。
何回失敗したっていい。もうただそばにいるだけなんて耐えられない。
試合で怪我してないか、家でただじっとしてるなんて耐えられない。
いつでも、部活の間でも鉄の側にいられる口実が欲しいの。まだまだ私は意気地がないから、貴方の隣にいられる理由を、
作りたい。
「てやっ」
だから、これが入ったら。私を石田鉄の彼女にしてください。
ヒロインが勝手に作った告白の条件。
しかも自分の中だけの条件。
めちゃくちゃなヒロインですね<おまえが言うな。
(2006/05/08)