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書名:幕末恋華
章名:永倉新八

話名:綺麗な着物


作:ひまうさ
公開日(更新日):2006.5.31
状態:公開
ページ数:1 頁
文字数:482 文字
四百字詰原稿用紙換算枚数:約 1 枚
デフォルト名:桜庭/鈴花
1)

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p.1

 綺麗な着物をもらっても、今の自分に着る機会なんてないのに。

「俺がオメーにやりたかったんだよ。いいからもらっとけ」
「はぁ」
 桜柄のそれを風呂敷に包み直し、それからしばらく忘れていた。山崎さんに見つけられ、たまには、と仕事も兼ねて。

「その格好で町で情報収集をしてきて」と着替えさせられ、送り出された。

 懐剣だけで少し心許ないけれど、永倉さんのくれた着物というだけでどこか安心できた。

「あ、永倉さん?」
 声をかけると吃驚した顔の後で、すっごく嬉しそうにしてくれて。

「やっぱ俺の見立てに間違いは無かったな」
「ありがとうございます」
「これから帰るんだろ? 送ってやるよ」
 二人で屯所までの道を歩きながら、永倉さんはいつもよりもゆっくり歩いて、手を引いてくれて。

「ありがとうございます」
「あん?」
 もう一度礼を言ったら、怪訝そうな顔をされた。

「なんだよ?」
「ふふ、何でもありません。ただ言いたかっただけです」
 いつもそれとなく守ってくれている。小さな事だけれど、気が付いたらいいたくなっただけです。

「変なヤツ」
 不思議そうにしていたけれど、やっぱり永倉さんは嬉しそうだった。

あとがき

ここで永倉さんは初めてかも。
(2006/05/31)