薬草の中でぼんやりと空を見上げる。少し澄んでいるように思える空気は元の世界になかった。こちらの世界で暮らすようになって、そろそろ一年が過ぎようとしている。
季節は秋。
肌寒くなってきた空気に自分で肩を抱きしめる。
「こんなところにいたんですか」
穏やかな声音と共に、後ろから包み込まれる。
「何を考えていたんですか?」
「弁慶さん」
押し隠した声音の中、どこか不安そうな彼の腕をきゅっと掴む。
「早いなぁ、って思って」
すべてが終わってから、まだたったの一年。出会ってからまだほんの数年。だけど、弁慶さんの存在は私の中ですごく大きい。
それはとても幸せで、時々夢かと疑いたくなる。
「まだそんなことを言っているんですか?」
「だって」
「こんなところにいるからそう思うんですよ」
体が宙に浮き上がり、力強い腕の中に抱え上げられる。
「きゃっ!」
「さあ、早く僕たちの家に帰りましょう」
温かい我が家で、いくらでも夢ではないと教えてあげましょう。