「はー…」
目の前で深く息を吐いた女は、その瞬間、隣の小さな少女に後頭部を叩かれた。痛くはないのだろう。非難の目も見せず、彼女はただ微笑んでいる。
「もぅ。はーさん久々のオモテナシでしょ!?」
「んなこと言ったってさーオモテナシなんてしたことないわよ」
彼女の返す言葉に、少女は奇妙な顔をする。
「そいえば、見たことない…」
「ほらね?」
納得しただろうと満足して女が身体を倒そうとすると、慌てて少女が支える。
「だったらなおさら!」
「えー」
「せっかく来てくれたお客さまにメーワクかけちゃダメよっ」
「かけてないわよ。ねぇ?」
こちらを初めて向いた彼女は、にっこりと微笑んだ。
「それに、あなたの目的って私たち(オリジナル)じゃないしね」
「ちょっと、はーさん!」
「管理人さんはオシゴト忙しいらしいわ。ま、日記を見る限りじゃそれだけでもなさそうだけど」
隣で少女が「余計なこと言わないの!」と怒っているが、彼女は意に介した様子もない。そして、視線は私を通り越して、後ろへと向いている。だが、振り返ってみてもそこには夏の眩しい日差しが降り注ぐ青空しか見えない。
「『メッセージがもらえるとやる気が起きるかも』? なかなかなめたこと言ってるじゃないの。でも、たしかにメールとかWeb拍手もらえるとやる気が起きてるみたい。よければ、何でも良いから一言書いてやってもらえる?」
あとは宜しく~と言って立ち上がり、彼女は奥へと姿を隠してしまった。