雪を被った梅に手を伸ばし、そっとそれを払う。
光の残滓がキラキラと目の前に落ちるのをうっとりと眺める。
「何してんですか、せんせ」
「いやぁ梅が綺麗だなぁって」
へらりと、縁側で座っている彼女に笑いかけると、露骨に眉を顰められた。
何もそこまで毛嫌いしなくても。
「んじゃ好きなだけそこにいてください」
彼女が何かを取り上げ、俺は放り投げられた小さな包みを受け取る。
それは小さな小さなチョコレート。の、欠片。
「…ふつうさぁ、バレンタインだったらもうちょっと」
「ただのおやつです」
こちらを見もしないで彼女もまた、手元のそれを自分の口に放り込んだ。
倣って、俺もそれを口に入れる。
それは全然甘くなかった。
「苦~っ!?」
カカオ99%ですよ、と彼女が楽しそうに笑った。