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書名:読切
章名:テーマ(500文字制限)

話名:テーマ「四季」 - 「四季」をテーマにした散文


作:ひまうさ
公開日(更新日):2008.10.30
状態:公開
ページ数:4 頁
文字数:959 文字
四百字詰原稿用紙換算枚数:約 1 枚
「春」[全ての始まり、全ての終わり
「夏」[命の輝き、届かない掌]
「秋」[君の幸せ、僕の願い]
「冬」[雪の白、嘆きの黒]

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p.1

ーー全ての始まり、全ての終わり




 春は嫌いだと君は言う。

 誰よりも桜の似合う君は青葉の土手に座って、薄紅の花弁を短い黒髪に散らせて。怒ったように、今にも泣き出しそうに言う。

 春はすべての始まりであった。君が彼と出会ったのも春のはず。何故そんなにも、君が哀しむのかわからない。

 春は冬の終わり。雪解けは凍えた心も癒し、温かさで世界に息吹を吹き込む。

 なのに何故、君はそんなにも泣くのだろう。

 どうか、どうか、泣かないで。ねえ、笑ってよ。

 春は笑顔の季節。初めて会ったあの日の君の笑顔が見たい。



p.2

ーー命の輝き、届かない掌




 夏は暑いと当然の文句を言いながら君が笑う。

 キャミソールとマイクロミニのスカートから伸びる白い四肢が眩しくて、僕は目を細める。

 ポニーテールにした長い黒髪が背中で踊り、暑いと言いながら持ち上げると、白いうなじがまばゆくて。目を逸らす僕を君は笑う。

 夏は君を好きになった季節。君が好きだと言った季節。

 君の命が放つ光が眩し過ぎて、僕は君に触れられなかったんだ。一緒に見た花火は君ばかり見ていて、実はよく覚えてない。

 いつまでも失わないでと願った夏。僕はそれが永遠でないと知っていた。



p.3

ーー君の幸せ、僕の願い




 僕の目の前で君が笑う。秋桜で揺れる君の笑顔は夢。これは夏が見せる夢の続きだろうか。





「トオヤ!」





 さっきまで手の届かない場所にあった君の笑顔が、何故ここにあるのか。ああ、これは夢。夢の続き。

 笑顔から零れる滴が僕の顔を濡らす。

 泣かないで。君の笑顔が僕の願い。

 僕は君のために生まれたことを幸福に思っているよ。

 だから、最期は君の笑顔が見たい。



p.4

ーー雪の白、嘆きの黒




 ざくざくざく。

 雪深い山の中で泣きながら、雪を掘る。

 ざくざくざく。

 春が好きだといった君だから、桜の木の下に埋めてあげたくて。

 ざくざくざく。

 白い雪に紅い線がついても、掘り続ける。ここにいたら、きっと君は止めるだろう。

 だけど、君はもういないから。

 私には何もさせてくれなかった君だから。

 ざくり。

 耳元で切った髪を亡きがらにのせる。君が好きだと言った私の髪をあげる。

 だから、どうか、次に生まれたら。1番最初に私を見つけて。

 好きだと言って。

「トオヤの、…バカヤロウ…っ」
 冷たい雪に落ちた雫は深く沈んで、消えた。

あとがき

「春:全ての始まり、全ての終わり」
今回は散文的に書いてみる実験。←
季節ループします。
(2008/10/29)


「夏:命の輝き、届かない掌」
春から続いていたり。
(2008/10/29)


「秋:君の幸せ、僕の願い」
感傷が過ぎた…
(2008/10/29)


「冬:雪の白、嘆きの黒」
 そして、春に戻る、と。感情の赴くままに書いたけど、不調かも…。
(2008/10/29)


公開
(2008/10/30)


ファイル統合
(2014/9/4)