うちの会長はどこに出しても恥ずかしくない容姿端麗、才色兼備、文武両道の人だ。ただひとつのことを除けば、どこに行っても俺は胸を貼っていられる。
「かいちょぉ~」
「なあに?」
半月前に会長の頭に生えたうさぎの長い耳は未だにそこに居座っている。振り向いた会長の頭でひくひくと揺れている耳を見て、俺はこめかみを押さえる。
「今日は外部からも人がくるんですよ。どーすんですか、それ」
「どうって、何か問題ある?」
「あるに決まってるでしょう。どこの世界にうさぎの耳を生やした会長がいると思ってるんですか」
「ここにいるじゃない」
あっさりと返され、俺はいつも絶句する。そうだ。いつもこれにやられてしまうんだ。
深くため息をつく俺の前で会長がシルクのような上品な光沢のある黒いマントを身につける。もちろん、内側は赤い。今日は校内あげてのハロウィン・イベントなのだ。もちろん、会長発案である。
「君、手伝って」
「…会長、なんでまたそんな可愛くない格好に…」
仮装イベントで会長自ら率先して仮装しているのだが、この人なら間違いなく魔女の姿が似合いそうなのだが。
「え、可愛いでしょ。パンプキンマン」
よりによって、南瓜のお化けになることないと思うのは俺だけではないはずだ。
「あれ、耳は出すんですか?」
「当たり前でしょ。中に入れたら、痛いじゃない」
知りませんよ、そんなこと。生まれてこの方、うさぎ耳が生えたことなんてないんですから。