うちの会長は素晴らしく人気もあるし、文武両道を地で行くパーフェクトな人だ。
今日の会長は雨なのにかなりご機嫌だ。書類にサインする単純作業を鼻唄を歌いながら進めている。
「なんかいいことでもあったんですか?」
ぴくりと頭上の長い耳が揺れた。
「聞いてくれる!?」
「…聞きたくなくなりました」
哀しそうな表情とともに長い耳もへにゃりと落ち込む。
「冗談です、会長。何があったんですか?」
苦笑しながらいうと、ピンと立つ耳とともに満面の笑顔が返された。
あぁもう可愛いな、会長!
「雨が降ると湿気が耳に貯まって大変なの」
いきなりそこからですか、会長。
ちなみに会長は耳が生えてからも普段どおりに生活している。まったく変わらず。電車と自転車を使って通学しているのだ。雨の日は自転車がバスに変わる。
「電車に乗るまではね晴れてたのよ。天気予報も夜まで降らないって言ってたしさ、傘持ってこなかったの」
「天気予報なんか信じてるんですか」
「一応ね」
憮然とした顔で眉間にしわを寄せる。天気予報が当てにならないことぐらい百も承知のクセに、どうしてこういうときだけ信じるのか俺にはわからない。ちなみに俺は常に折り畳み傘を鞄に忍ばせている。
「君の事は別にいいのよ」
「ごもっとも。それで、電車を降りたら雨が降っていたんですよね」
「そうなのよー! お天気お姉さん信じてたのにっ」
またも脱線しそうだ。
「会長、それで電車を降りてから傘を買ったんですか?」
「コンビニに行くまでに濡れちゃうじゃない」
学校に一番近い駅は小さめで、駅の中に売店もない。俺もよく利用するので知っている。
「じゃあどうしたんですか?」
俺が尋ねると困ったように会長は首を傾けた。同時に長い耳も横に傾く。
「駅中で困っていたらね」
「駅員さんにもらったんですか?」
「…君、話を聞く気ある?」
少し機嫌を損ねたのか、眦が上がった。
「ごめんなさい、続けてください」
続きは気になるので、素直に頭を下げる。
「よろしい」
満足げに会長はにっこりと微笑んだ。
「もらったの」
少し思考が停止する。平日の朝から会長に傘をあげる人と言ったら。
「やっぱり、駅員…ごめんなさい、続けてください」
つっこもうとしたら睨まれたので、先を促す。
「三年の前会長は君も知ってるわね。その前会長が通りかかって、貸してくれたのよ」
「ハグ一回で」
満足気に語り終えた会長とは対象的に、俺はにぎりしめたシャーペンを力いっぱいへし折った。
「もっと警戒してください、会長!」
モバイルSNSの日記で書いてたので、字数なくて強制終了。
前会長の名前を考える気はなし。ていうか、他も名前無いな、そういえばw
会長は今日も最強です。
なんでこんな話を思いついたかというと、朝から雨降ってるのに電車に傘を忘れ、しかたなく水色の傘を買ったわけだ。で。
「新品の傘っていいなー」
「水色ってより、これは空色だからだな!」
「空色の傘だから、雨の中でも晴れてるんだ」
「何故なら、そこに晴れた青空があるから」
「あれ、でもここに空があるってことは…」
「あれ?傘の中なのに雲が…」
「うあ、傘の中なのに雨降ってきたー!?」
こんなことを考えながら出勤している自分は変だと思ったので、うさ耳会長ならどうするだろうと妄想した結果がこうなった。
(2009/01/22)
公開
(2009/02/06)