薄く朱に染まる貴方のまぶたに口づける。微かに揺れて、だけどよほど疲れていたのか、起きずにまだ眠る。
放課後の教室。二人だけの時間。先に眠ってしまったのは私だけど、先に起きた私の特権で、貴方の寝顔にキスを落とす。
まだ起きないで、と願う。子供な私に合わせて、いつも我慢してくれてるのは知ってるけど。と、またひとつ、口端に口づける。
「…惜しいな」
囁く低音に離れようとしたら、抱き寄せられた。
「キスから教えないとダメか?」
「いつから…っ」
起きていたのと尋ねる前に、いつものように黙らせられた。
「ズルイよっ」
「先に襲ってきたのはお前だろう」
いつもいつも言い返せない。でも、こんな時間が貴方も好きだって私は知ってる。
「いつか絶対勝ってやるんだからっ」
「楽しみにしてるぜ」
あからさまな得意顔、いつか絶対崩してみせる。と意気込む私の頭を貴方は胸に引き寄せて、囁く。
「じゃあずっとここにいないとな」
「当たり前でしょっ」
それがプロポーズと気がついたのは、そのまま貴方の寝息が聞こえてからだ。
「…ずっと、ここにいるよ」
変わらぬ愛の誓いを月だけが見ていた。