庭先から遠く眺める空は蒼く果てがない。
「どうしたィ?」
ふわりと柔らかに抱きしめられて、その太い腕にそっと自分の細い腕を添えた。
「…函館で副長が死んだって」
彼はぴくりとも動かない。
「行かなくて、いいの?」
抱きしめる力が強められ、耳元で溜息と共に吐き出される。
「お前をおいていけるかよ」
顎を掴まれ、上向けられて口が重なる。
「時代は代わっても、俺らは生き続けなきゃならねェ。生きて、伝えなきゃな」
その声は諦めを多分に含んでいて、私はそのまま唇を噛んだ。
「痛っ、なにすんでィ」
「私の好きになった人は私を理由にしませんッ」
顔を背けると、少しの間をおいてから肩口に頭が乗せられた。謝罪の言葉にそっと私は彼の髪を撫でる。誰よりも口惜しいのは貴方だから、赦してあげる。
「時代は変わっても、私は、私だけはこのままそばにいるから」
「…っ」
「貴方もそのままでいてください」
わかった、と小さな呟きに私も静かに微笑んだ。