暗闇にいると安心するのは母親の胎内を思い出すから、らしい。
「絶っ対ウソ」
そういう私は重度の暗所恐怖症だ。私の行く先、完全な暗闇は有り得ない。
「
そのために光を燈すこの魔法を死ぬほど練習したからだ。一語でだせるこの超初級魔法を私はどんな状況下であっても半径10メートルまで真昼のように1時間は照らせる。普通ならせいぜい1メートルで、持続も10分程度だ。
「
笑顔で目の前の男が呟く。とたんに私の周囲が闇に落ちる。これは上級の消失魔法だが、普通ならこの程度で私のライトが消せるはずがない。
「
つまり、こいつが異常なのだ。
「
「
「
「
彼は立ち止まり、ひとつ深い息を吐いた。
「
辺りが闇に覆われ、再び唱えようとした口は何かに塞がれる。柔らかくて、温かなソレはとてもよく知るキスの味。
「明るかったら、お前の可愛い姿がバレるだろ?」
甘く囁く恋人を、私は腕の中から睨みつけた。
自分を見失った。
軽く男のほうが腹黒っぽいことに読み返してて気が付きました。
(2008/12/23)
公開
(2008/12/24)