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書名:読切
章名:テーマ(500文字制限)

話名:テーマ「光と闇」 - 哀しい殺人者


作:ひまうさ
公開日(更新日):2009.1.3
状態:公開
ページ数:1 頁
文字数:476 文字
四百字詰原稿用紙換算枚数:約 1 枚

テーマ「光と闇」

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p.1

 どうして、と問うと彼女は悲しげに笑う。いつでも変わらない笑顔で、笑う。

 手にした剣に血を滴らせ、血溜まりに立ちながらも静かに微笑む。

「貴方には知られたくなかったわ」
 穏やかに微笑む彼女は虫も殺せるようには見えない。だが、俺は確かに今この目で彼女が人を、彼女の兄を殺すのを見た。

 深窓の令嬢と言う詞がぴたりと嵌まる女性だが、意思の強い目をしているのが印象を深める。

 その闇色の瞳を微かに滲ませ、彼女は静かに笑う。それさえも絵から抜け出たように美しい。

「知られたくなかったわ」
 彼女の後ろの窓硝子に、闇から一筋、目の眩む朝日が差し込んだ。光に目を細めた瞬間、ごう、と風が室内に吹き込む。

「……さようなら」
 風が収まり、目を開けた時には彼女の姿はそこになく。窓の下で剣を抱き、幸せそうに眠る彼女を朝日だけが優しく照らしていた。

 武藤小夜、享年十五 。この彼女の死から明かされる事件の真相は、それからも世間に知らされることはなく、彼女はただの狂人として歴史に埋もれてしまった。

 そして、哀しい殺人者は、ただ哀しい笑顔と痛みだけを俺の胸に残し、消えてしまった。

あとがき

 1月1日の夜1~2時間でケータイで書きました。長距離運転の後で疲れていたのに。指が疲れた上に何か気力を吸い取られました…。
 だが、どうしても書かなきゃならんかったのですよ。同じテーマの他人創作を見るためには!←
 新年初創作は好評価をJ氏にいただいて幸先はいいが、こんな暗い話でいいのか…?
(2009/01/03)