「ここでの妖怪や物の怪。それがたぶん私を指すのだと思うよ」
金髪に青目の面妖な男は寂しげに笑った。彼の言う意味がよくわからないのは、おそらく私がまだ子供だからだ。
「そうか」
唐撫子の鞠を手に花橘の襲ねを引きずりながら男に近づき、大きな手を取る。私にとって彼が何者かなどというのはどうでもいいことだ。
「話はそれで終わりだな?じゃあ、遊ぼう」
面食らった顔をした後で男は屈み、顔を見合わせ、先ほどよりも強めに言い聞かせる言の葉を紡ぐ。
「だから、私と遊ぶと君が穢れて、」
可笑しな事を言うヤツだ。
「遊んだら汚れるのは当前だ。それより遊ぶのか、遊ばないのか?」
彼の額を空いた手で叩いた拍子に、手元から鞠がこぼれ落ちた。急いで追いかけ、それを手にする。
「っ!……あのね、」
「おい、ゆくぞっ」
困った様子の男に向かい、私は拾い上げた鞠を放り投げた。新緑に鞠の緋が鮮明な赤を描くのを追う。
「……意気地無しめ」
先ほどまで男が居た虚空を見つめ、呟いた自分の声は泣きそうに震えていた。
人とか妖とか、そんなのは些末なことだ。私はただ誰でも良いから遊び相手が欲しかっただけなのに。
「夏目友人帳」を見てたら、妖怪話を書きたくなった。
時代は平安ぐらいがいいなぁ、てそれって遥かじゃね?という経過を得て、金髪碧眼=面妖。
(2009/02/11)
公開
(2009/02/13)