最後にぱちりと置かれた白石が、盤上に残った俺の黒石の運命を決めた。
「くっ、なんで俺が初めてやるナツに負けんだよっ」
彼女は至極楽しそうに、一つずつ石をひっくり返してゆく。
「さぁ? タキが弱いだけじゃない?」
「これだったらナツに勝てると思ったのに…っ」
全部を返し終わった彼女は満足そうに白い盤上を眺め、頷いている。
「仕方ないよ、私が勝負事に強いのは当たり前だもん」
確かに彼女は勝負と名のつくもので負けたことは一度もない。それこそ、どんなことでも、だ。当たりすぎて面白くないとよく口にする。
「だからって、納得できるか」
「タキは理論で考えすぎなんだって」
ぶちぶちと文句を言う俺の隣に移動してきた彼女は、自然と腕にもたれかかる。
「私が勝ったから、次のデートはぜーったいメリーゴーランドに乗ってもらうよ」
堂々と宣言する姿はとても可愛い。可愛いのだが、それだけは絶対に嫌だ。
「ナツ様、ナツ姫様、もう一回勝負しねぇ?」
「いーけど、また私が勝つよ」
にやりと笑う彼女に、俺はやはり勝てないのだった。