うちの学校には、ちょっと変わった会長がいる。かなり控えめに言って、「ちょっと」変わった会長だ。
文武両道を絵に描いたような美人で和風美人。これだけなら、いないこともないだろう。事実、会長が会長となったときはまだ「それ」は無かったんだ。
「そういえば、会長」
窓に両肘をつけて、頬杖をつきながら校庭を眺めている会長の髪が肩口で風に揺れている。さやさやと音の聞こえてきそうな後ろ姿につられ、俺は会長に近づき、隣に立って、校庭を見た。
眼下には下校中の生徒たちが溢れている。
「……新学期に入ってから、増えてますよね」
ぴくりと動いたのは会長の肩でもなく、もっと上。そう、頭の上だ。
「一体どんな手を使ったんですか」
外を見ていた会長が俺に体ごと向き直る。
「どんなって、なんの話?」
余裕気な会長の表情は以前通りだが、ぴくぴくと会長の頭の上に立つ二本の白い……そう、ウサギのような長い耳が何かしたことを肯定している。
「とぼけても駄目ですよ」
小首を傾げる会長の頭の上で、またピクピクとウサギ耳が揺れる。
「ウサギ耳を付けると花粉症が治る、なんてデマを流さないでください」
「あら、決め付けることないじゃない」
椅子にすわっている会長が自然に足を組むと、規定丈のスカートから健康的な太ももがかすかにのぞく。俺だって、健全な男子高生だからして、まったく気にならないといえば嘘だ。でも、会長はいつもそうやって俺を丸め込もうとする。
「試しにキミもつけてみたら?」
ほら、とどこからかウサギ耳を取り出した会長が、いつの間にか俺の目の前で微笑む。
これは会長の作戦だとわかっていても、動揺しないでなんていられない。
「俺は花粉症じゃありません! それに、そんなことで治るものでもないでしょう」
「えー、そんなのわからないじゃない」
「と、とにかく、そういうデマでウサギ耳を肯定しないでくださいっ!」
かわいいのに、と会長は笑って、離れていく。かすかに残る桜の残り香に、俺の胸は動悸が止まらない。
「……ともかく、風紀から文句が来てますから、ちゃんと明日の朝の放送で説明してくださいね」
「何を?」
「ウサギ耳と花粉症に、なんの関係もないことをです!」
どん、と俺が机を叩くと、会長のウサギ耳がビクリと震え、へたりと落ち込む。
「そんなに怒ることないじゃない」
口調はいつもどおりだけど、ウサギ耳が震えていて。俺は少しだけ後悔した。
「可愛いんだから、きっと花粉症だって」
「治りませんっ」
読了有難うございます。
まだまだリハビリ中なのですが、書きたい衝動にかられているので書いてみました。
…頑張ろう。
(2011.4.25)
某ケータイSNSで更新して、こっちに載せるのを忘れてました!
(2011.6.4)