ゆらゆらゆらり
水面が揺れて、人を型どり、礼をする。
「あんた、誰?」
水の人は何かを語るけれど、こちらにはこぽこぽと水の泡立つ音しか聞こえない。
伸ばされた手に身を引けば、哀しそうに笑ってみえた。
「…誰?」
もう一度問うと、それはぱしゃりと形を失う。
「何してんだ?」
明るい声は夜だというのに辺りに光を灯すよう。
「何も」
「…一人か?」
「ん」
手を繋がれて、驚いた顔を向けると、彼は顔を赤くしていた。
「なに?」
「別に」
隣にいるだけで、なんとなく温かい。そんな関係。